
バルコニーや屋上がFRP防水という方へ、雨漏り補修とメンテナンス

屋上やベランダ、バルコニーなど雨の影響を直接受ける場所には防水工事が必須ですよね。
近年新築戸建てのベランダやバルコニーにも施工されることが多いのがFRP防水です。
非常に防水性が高く、最強の防水と言われることもあるFRP防水ではありますが決して雨漏りしないというわけではありません。
実際、私たちアメピタにはFRP防水が施されたバルコニーをお持ちのお客様から「バルコニーの下の部屋から雨漏りがしてるんですが…」とお問合せをいただくこともございます。また防水層の表面がひび割れていて「なんだか雨漏りが心配」といったご相談をいただくこともございます。もちろん雨漏りはFRP防水だから起きたというわけではなく、経年劣化やメンテナンスの放置などどんな防水工事においても、要因がそろえば起こり得る不具合です。
大切なのは雨漏りが起きた際に状況に合わせた補修、防水工事を行うこと、また雨漏りを引き起こさないために防水工事の種類にあったメンテナンスを行うことですよね。
ここではFRP防水について特徴やメリットなどの基礎知識から、雨漏りで困っている、雨漏りが不安という方に向けてFRP防水のメンテナンス方法までご紹介します。
FRP防水とはどんな防水?特徴とメリット
FRP防水という言葉だけではどんな防水工事がわからないという方が多いですよね。
FRPってどんな素材?
Fiber Reinforced Plasticsの頭文字をとったものがFRPです。繊維強化プラスチックという非常に強い”プラスチック”の一つなのです。
こうして見ると言葉は難しいのですが、実は私たちの生活に身近に存在するFRP。例えばプールや浴槽などに使われているのがFRPです。浴槽やプールの素材を気にしたことがある方は少ないかもしれませんが想像することはできませんか?そうです、あのツルツルしたプラスチック素材がFRPなのです。

それ以外にもプロペラ機の本体に使われていたり、自動車や飛行機の構造部品にも使用されています。
浴槽やプールに使われていることからその耐水性は証明されていますし、プロペラ機本体や飛行機にまで使用されていることから耐久性があり、衝撃に強く、耐熱性に優れていることが容易に想像できますね。また金属のように錆や腐食といったこともありません。それだけ優れた素材がFRPなのです。
FRP防水ってどんな防水工事?
建物で施工される防水工事というとFRP防水の他にも、ウレタン防水、シート防水、アスファルト防水といった防水工事がありますね。
FRP防水はウレタン防水と同じメンブレン(塗膜)防水の一つで、液体の防水材を塗ることによって防水層を形成しています。シート防水のように一枚一枚のシートを切り貼りして防水層を形成するわけではないため、継ぎ目がなくシームレスな防水層を形成できるのが特徴です。

また例えばシート防水であれば凸凹部分にシートを張ると、当然凸部分と凹部分で接着剤がきちんと付着する部分とそうでない部分が出てきてしまいますが、FRP防水は液体であることから、凸凹があっても、また障害物があっても施工に問題がないんですね。
(※下地に凸凹があるような場所ではそもそもシート防水を行うことはしません。)
またメリットとしては先に紹介した素材自体の耐久性に加えて、軽量であることから建物に負担をかけることもありませんし、また塗装後の硬化も早いためウレタン防水と比較しても短工期での施工が可能です。
FRP防水はどんな場所に向いている?
素材としても非常に頑丈で、凸凹や障害物を気にしないFRP防水ですが、どんな場所でも施工できるかというとそうではないんですね。実は以下のような場所では施工ができません。



これはFRP防水のデメリットとなりますが、頑丈で強靭な防水層を形成するが故に、伸縮の柔軟性がなく非常に硬いという特徴があります。例えば地震が起きた際、当然その動きに合わせて建物が動きますよね。この際、木材の変形量とFRPの変形量が大きく異なるため、木材の動きにFRPの防水層が追従できず、ひび割れなどを起こしてしまうのです。
一般の戸建て住宅であればベランダ・バルコニーの広さというと10㎡程度ですから問題ありませんが、屋上のような広い場所への施工は控えるべきでしょう。
一方で鉄筋コンクリート(RC)造の建物は揺れに強く、耐震性があるためこの限りではなく例えばショッピングセンターなどの屋上駐車場にはFRP防水が施工されていることが多いのです。頑丈で固いということで、人の出入りはおろか車の通行にも耐えられる強さがあるのはFRPの強みでもあります。

また、例えば雨漏りがしており、下地が傷んでしまっているような場合もFRP防水を控えるケースが多いと言えます。密着工法での施工が多いFRP防水では下地が雨水を含んだままの状態で防水層を形成してしまえば、水分の蒸発の影響を受けることで膨れたり、浮きや剥がれに繋がってしまう可能性があるからです。
以下に同じ塗膜防水であるウレタン防水との比較を表にまとめましたのでご覧ください。

FRP防水の劣化原因と劣化症状
強靭で耐久性に優れたFRP防水、しかしいくら頑丈な防水工事と言えども、やはり耐用年数は存在します。特にFRP防水は紫外線に弱く、屋根のない屋上やバルコニーといった場所に施工されているためもろに紫外線を浴びることになり、劣化を免れない非常に過酷な環境に晒されていると言えますよね。
FRP防水は下地の上にプライマーを塗り、その上にポリエステル樹脂を塗布し、ガラスマットを敷いた上にさらにポリエステル樹脂を塗布した上で、最後に防水層の保護としてトップコートが塗られていますが、紫外線の影響を受けてトップコートが剥がれてしまえば防水層を保護するものがなくなり、紫外線や雨水などによって次は防水層が劣化を進めます。
防水層自体の塗膜の剥がれ、割れやヒビなどがひどくなれば、屋上やバルコニーの防水性能はなくなりますから、雨漏りにまで発展してしまうというメカニズムなのです。
それではFRP防水の劣化とはどのような姿を見せるのか、次から劣化症状について見ていきましょう。
1.表面のひび割れ

経年劣化でまず見せる症状がトップコートのひび割れです。亀裂が所々に表れるためこの段階で「雨漏りが不安」とご相談いただくお客様が多いですね。ご安心いただきたいのはこの段階ではまだ雨漏りに発展する不具合ではないということです。
とはいえ、防水層を保護しているトップコートが劣化しているわけですから放置するわけにはいきませんし、もし放置してしまえばむき出しになった防水層を直接傷めてしまうリスクがありますので、この段階でご相談いただくのは大正解なのです。
2.床表面の摩耗

人の出入りが激しいようなベランダ、バルコニーではトップコートが経年で摩耗を起こしてしまいます。特に出入りが頻繁な出入り口付近や、人が歩く物干し竿の下などは特にこのような症状を見せやすい場所と言えますね。
このような劣化は使用上の経年劣化によるもので、ある程度は仕方ないことだと言えます。表面のひび割れ同様すぐに雨漏りを起こしてしまうような不具合ではありませんが、そのままの使用を続ければ防水層が露出し、直接防水層を傷めてしまう事になるため、トップコートの塗り替え時期に来ているとご理解ください。
メンテナンス方法:トップコートは5年程度に一度は塗り替えましょう
防水工事を必要としている箇所は、言うまでもなく雨の影響を受けやすく、雨漏りが発生する危険性があるから防水工事をしているわけですよね。
FRP防水の寿命は長いと20年ほどの耐用年数を期待できますが、これはあくまでもきちんとメンテナンスをされていればという前提があってこそです。トップコートが剥がれ、紫外線や雨が直接防水層を傷めつける環境下においては、想定通りの寿命なんて期待できませんよね。雨漏りを防ぎ、屋上やバルコニーの健康状態を長く維持するために5年程度に一度はトップコートの塗り替えを行うようにしてください。
トップコートの塗り替え事例


トップコートを塗る前の準備として苔や汚れを洗い流す高圧洗浄、研磨による下地調整、塗料の密着を高めるための油膜除去を行います。
油膜除去には、女性の方であれば馴染みがあると思いますがマニキュアを落とすための除光液のような有機溶剤(アセトンがよく使われます)を不要な布やローラーに染み込ませ拭くことで油分を除去します。


まずはプライマーを塗布し、下地と上塗り塗料の密着性を高めます。プライマーによる下塗りが終わったら、トップコートを二回にわたって塗り上げます。
トップコートの塗布ぐらいはDIYで、と考えられる方もいらっしゃるようですが、アセトンや塗料などは適切な取り扱いが求められるうえに、下地調整などがきちんと行われなければトップコートを塗ってもすぐ剥がれてしまいます。必ずプロにお任せください。
3.トップコートの剥がれ



トップコートが剥がれ、防水層が覗いてしまっている状態です。ほんのわずかな剥がれであればトップコートの塗り替えでも対応が可能ですが、広範囲に渡り、且つガラス繊維が見えてしまっているような状態の場合トップコートが剥がれて相当な時間が経過している証拠でもあります。
さらに放置してしまえば防水層に穴を空け、雨水の浸入口となり、雨漏りを起こしてしまいます。
4.防水層の浮き

防水層が下地から浮き上がり、膨れてしまっている状態です。
密着工法で行われたFRP防水においては下地との密着不足により生じた隙間に空気層ができ、気温の影響を受けて空気が膨張をすることで膨れが生じた、また雨漏りでもこのような症状を見せることも少なくありません。
どういうことかと言いますと、雨漏りによって下地が水分を含みます、そしてその水分が蒸発することで防水層を下から押し上げるような形で浮かしてしまうというメカニズムです。
剥がれ、浮きいずれにしても雨漏りに発展する前に雨漏りの専門店に見ていただくことをお勧めします。
メンテナンス方法:FRP防水の再施工を行いましょう
防水層の劣化、下地の劣化が考えられる剥がれや浮き(膨れ)においては防水層を新たに作るためのFRP防水再施工を行います。
浮きが見られる場合はそのまま施工するわけにはいきませんので、浮いている部分を切除した上で切除面の下地と不陸を調整した後、全体的なFRP防水を行うようにいたします。
剥がれが見られる防水層の補修事例


トップコートが剥がれ、中の防水層が完全に露出してしまっています。苔の繁殖もあり長い期間、剥がれが放置されてしまった状態を物語っています。雨漏りに発展する前にFRP防水の再施工を行い、ベランダの防水性を復活させます。


トップコートの塗り替え時と同様ですが、下地処理が防水工事の耐久性を左右するといっても過言ではありません。サンダーやアセトンで剥離箇所のケレン、そして油膜除去を行います。


下地調整が完了したら防水層を作っていきます。まずはプライマーを塗布となります。そしてガラスマットを貼り、ポリエステル樹脂で固めます。樹脂内に残った気泡を除去します。ガラスマットを二層作る2プライでの施工のため、ガラスマット敷設、樹脂による固め、気泡除去の作業を繰り返します。そして研磨を行い、トップコートを塗っていきます。


FRP防水の最終工程であるトップコートの塗布です。見た目の調整だけではなく。紫外線に弱いFRP防水層を保護してくれる役割を持つトップコート。先述もしましたが、完工後は5年程度に一度塗り替えを行い、ベランダの防水性を維持していきます。
浮き(膨れ)が見られる防水層の補修事例


浮きが見られる部分に印をつけ、サンダーで切除し、防水層を剥がします。下地の状態を確認すると下地への密着の様子がありありとわかりますね。


切除部分にプライマーを塗布し、FRP防水の特徴でもあるガラスシートを貼り付けます。切除した部分とそうでない部分とで凸凹ができないようガラスシートを二枚貼り付け高さをあわせていきます。またガラスシートに樹脂を染み込ませ固めていきます。


不陸の調整を行った後にバルコニー全面にガラスマットを貼り付け、こちらも樹脂を塗布し固めていきます。


改めて切除部分と既存の床面とで段差ができるため、パテで不陸を埋めていきます。
また既存のひび割れや凸凹を残さないよう2プライでガラスマットを二層貼り付け、中塗りしました。


最後に保護剤としてトップコートを塗り完工です。色はグレーを採用しましたが、グレー以外でもグリーン系やブルー系、アイボリー系などをお選びいただくことができます。
5.雨漏りを伴うような不具合

既に雨漏りが発生してしまっているような場合においては、どこかに雨水の浸入口が存在しているということを意味していますよね。劣化状態としては防水層の劣化に加えて、下地にまで雨水が染み込み、劣化や腐食を進めている可能性があります。特に雨漏りが深刻に進んでいる部分は下地が腐食し、歩くとブカブカするといった感触があります。
雨漏りが発生している場合においては下地や躯体部分の状態まできちんと把握する必要があります。雨漏りは建物の強度にも影響する重要な不具合ですので早急なメンテナンスを実施しましょう。
メンテナンス方法:下地や躯体の交換・補強を行った上で防水工事を行いましょう
雨漏りがしてしまっているということは雨水が防水層から入り込み、下地までも貫通し、室内に雨染みや水滴といった形で現れているということです。
下地や躯体の状態を確認した上で、必要な補強工事、下地交換を行った上で再度防水工事をやり直します。この際選択できる防水工事はFRP防水だけではありません。
耐用年数や歩行性を考えればFRP防水が最も良いかもしれません。しかしコストが若干高いというデメリットもあります。またFRP防水の防水層は硬く、追従性という部分で柔軟なウレタン防水にはどうしても劣ります。
コストや追従性、また下地の状態などを踏まえてウレタン防水の通気緩衝工法を選択するというケースも多々あります。お客様のご予算やご希望、お住まいの状態を踏まえてアメピタでは最適なご提案をさせていただきます。
また雨漏り被害が室内にまで進展してしまっている場合の内装工事も対応しておりますのでご安心ください。
雨漏りが発生したFRP防水の補修事例


防水層が裂けて割れてしまったことにより、雨漏りが発生したバルコニーの改修工事です。
傷はわずかではありますが、バルコニーに足を踏み入れると下地が沈む感触があります。バルコニーの底が抜けてしまえば大変です。下地補修も含めて早急なメンテナンスが必要な状態でした。今回はFRP防水からウレタン防水通気緩衝工法へのリフォームのご紹介です。


既存のFRP防水層を剥がしていきます。割れ目部分にあたる下地を確認したところ相当な腐食が進み、穴が空いてしまっている状態でした。よほど長い間雨水が浸入していたことがわかります。


既存の下地は使えませんので、新しい下地へと張り替えます。ここ大切なことは排水を促すために適度な勾配をつけることです。一見平らで勾配のないバルコニーですが、勾配がなければ受けた雨水を排水口に運ぶことはできませんよね。防水工事を単に塗料を塗るだけではなく、こうしたことにも配慮して工事を進めていくのです。


この度の施工は通気緩衝工法です。下地に通気緩衝シートを張るのですが、密着をより良くする為にプライマーを立ち上がり部分も含めて塗っていきます。


次に通気緩衝シートを貼り付けていきます。全体に貼り付け終わったら、排水口部分に改修ドレンを設置します。ハンマーでたたくことで成形し、シートと密着させます。


通気緩衝工法の最大の特徴は通気緩衝シートと脱気盤(または脱気筒)を設置することです。これらを設置することで下地と塗膜の密着を避ける上に、水蒸気の排出口を作ることで塗膜の膨れを防ぐ効果があります。
またシートの結合部にウレタンを塗布し、シートの隙間をなくします。


床面、立ち上がり部分にウレタン防水材を塗布し、防水層を形成します。ウレタン防水の通気緩衝工法では二度塗りを行い、より強い防水層を作ります。


FRP防水同様、紫外線に弱いため防水層を保護するためのトップコートを塗る必要があります。またトップコートはウレタン防水でも同様に5年程度に一度の塗り替えが必須となります。


脱気盤のトップと排水口のごみ除けの設置を行い、FRP防水からウレタン防水通気緩衝工法へのリフォームが完工です。
番外編:雨漏りを防ぐためにはドレン周りも要注意!
実は屋上やバルコニー、ベランダの雨漏りの原因は防水層の劣化もそうですが、ドレン(排水口)の詰まりも代表的な雨漏り原因の一つです。
ゴミや落ち葉などの詰まりにご注意いただき、定期的な掃除を欠かさないようにしましょう。その際例えばほうきで掃除する場合、ゴミや落ち葉をドレンに掃き込まないようにご注意下さい。
屋上・ベランダのFRP防水のメンテナンス、雨漏り補修はアメピタにお任せください
お住まいの中でも最も雨漏りが起こりやすい場所ともいえる屋上やバルコニー、ベランダ。
だからこそ防水工事が施され、紫外線や雨などの環境や雨漏りから建物を守ってくれています。
雨漏りは一度許すとどんどん進行し、建物自体をどんどん傷めてしまう不具合です。放置が続けば建物の強度を落としてしまう事はもちろんですが、補修箇所もどんどん広がり必要となるコストも増えていってしまいますよね。だからこそ”雨漏りが起きる前に”が本来の鉄則で、使用されている素材や材料に合わせた定期的なメンテナンスによる健康維持、万が一雨漏りが起きても”気づいた時点ですぐ相談”をしていただくことが望ましいですね。
アメピタは雨漏りに特化し、屋上やバルコニー、ベランダ防水の専門店でもあります。普段のご使用時に劣化に気づいた、異変に気付いたといったことがございましたらまずはお気軽にご相談ください。


バルコニーや屋上がFRP防水という方へ、雨漏り補修とメンテナンスまとめ

FRPは浴槽やプール、また飛行機や車などに使用され、耐水性や耐久性、耐久性に非常に優れた素材です。
FRP防水はウレタン防水同様塗料を塗ることで防水層を形成するメンブレン(塗膜)防水です。
木造住宅の面積の広い屋上やバルコニー、下地が鉄であるような場合、また雨漏りが長年続き下地が傷んでしまっている場合等はFRP防水は向きません。
FRP防水、劣化ではトップコート表面のひび割れ、摩耗、そして防水層の剥がれや浮きといった症状を見せます。
メンテナンスとして5年程度に一度はトップコートの塗り替えを行いましょう。
雨漏りがしているような場合は下地や躯体の状態を確認し、交換・補強を行った上で防水工事を行います。




