「屋根塗装(外壁塗装)をすれば雨漏りは直ります」
と塗装工事を提案する塗装業者がいるという話をお客様から聞くことがあります。
果たして本当なのでしょうか?
結論から申し上げて、
雨漏りが起きている外壁や屋根は塗装工事だけでは根本の原因を解決することができません。
しかし「塗装をしたから雨漏りが直る」と誤解している方が実に多く、そもそも業者側が塗装工事と雨漏り修理を混同しているケースも見られます。
こちらのページでは
雨漏り修理として誤解されやすい外壁・屋根塗装工事の正しい目的を解説するとともに、雨漏りが起きる原因や塗装で雨漏りが解消できない理由についてもご説明します。ぜひ塗装と雨漏り修理の違いをご理解いただきたいと思います。
【動画で確認「正しい塗装の目的」】
長い文章のページとなっていますので、内容を動画でもまとめています。動画で見たいという方はこちらをご覧ください!
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外壁や屋根は10~15年に一度は塗り替えが必要です。塗り替えが定期的に必要となる理由の一つは雨漏りを「予防」するためでもあります。しかし塗装はあくまでも建物のメンテナンスとして行う工事であり、雨漏りを直す「補修工事」とは全く別物だということを覚えておいてください。正しい雨漏り補修の知識を身に付けるためにも、まずは外壁や屋根を塗装する本当の目的を知っておきましょう。
外壁や屋根を塗装する目的は以下の二つです。
☑ 建物の美観回復
☑ 外装材の防水機能回復
美観とは「見た目の美しさ」のことですよね。 新築時に美しかった塗料も紫外線を浴び続けることで顔料が劣化し、経年で色あせてしまいます。見た目の劣化を色鮮やかな新しい塗料で塗り替えることによって家の美観を回復することが塗装工事の目的の一つとなります。
またこれまでの屋根や外壁の色に飽きた場合は、塗装の色や種類を変えることで外観を大胆にイメージチェンジすることも可能ですね。
例えば外壁のメインカラーにベージュを使っていたお住まいを思い切ってネイビーやブラックに塗り替えれば家の印象を大きく変えることができるでしょう。
このように、塗装工事は建物の美観回復に深く関わっています。ただし、建物の美観回復はあくまでも塗装工事の二次的な効果です。塗装工事の本当の目的は次から紹介する「防水機能の回復」にあります。
お住まいは外壁材や屋根材といった「外装材」によって表面が保護されています。外装材によって雨から守られることによって、建物の内側への雨水の浸入、つまり雨漏りを防いでくれているのです。
もちろん雨水の浸入に対する備えは外装材だけではなく、下地として防水紙が施工されており最後の砦として建物内部への雨水の浸入を防いでくれています。しかし雨や紫外線といったダメージを真っ先に受けているのは屋根材や外壁材といった外装材であることに変わりはありません。
外壁材と屋根材にはそれぞれの寿命が存在します。塗装メンテナンスが必要な主な屋根材・外壁材の寿命は以下をご確認ください。
〈屋根材の耐用年数〉
セメント瓦・モニエル瓦 | 20年~30年 |
スレート | 20年~30年 |
アスファルトシングル | 10年~20年 |
トタン | 15年~20年 |
ガルバリウム鋼板 | 20年~30年 |
窯業系サイディング | 30年~40年 |
金属サイディング | 30年~40年 |
モルタル | 30年~40年 |
トタン | 15年~20年 |
ALC | 50年~60年 |
こうした耐用年数はあくまでも塗装によるメンテナンスを定期的に行った場合の数字であるということをまずは覚えておいていただきたいと思います。
もし塗装を行わなければ紫外線や雨によってダメージを受け続け、塗膜が剥がれた外装材の防水性が著しく低下し、屋根材や外装材自体が雨水を吸収することで最悪雨漏りへと発展してしまうといったリスクにもつながります。
そうなれば上記の耐用年数まで持たないことは言うまでもありませんよね。このようなリスクからお住まいを守るために塗装が必要となるのです。
外壁や屋根に使われる塗料には、紫外線のダメージに強いものや汚れが付きにくいもの、撥水性が高いもの、ひび割れに強いものなど様々な種類があります。
外壁材や屋根材の種類に応じて適した塗料で保護することにより、外壁材や屋根材はさらに雨や紫外線に強くなります。ただし必ず経年劣化を起こしますので新築から約10年、それ以降は塗料に応じて10年~20年に一度は塗り替えが必要です。
このように
塗装工事はあくまでも外壁材や屋根材の表面を保護して建物の美観回復や防水性能を維持するために行う工事です。
ですから例えば、 「屋根や外壁が割れてしまいそこから雨漏りが始まった…」 「防水紙まで傷んでしまったことで雨が降るたびに雨漏りがする…」 といった症状に対して、外壁や屋根の表面だけ塗装を行っても雨漏りの根本的な原因は解決できないのです。
雨漏りを直すためには雨漏りの発生原因と正しい補修方法を知っておくことが大切です。
塗装工事を行う目的について見てきました。そもそも塗装工事は雨漏りを直すための工事ではないということもご理解いただけたのではないでしょうか。 ではなぜ雨漏りが発生してしまうのでしょうか?塗装で直らないのだとしたら何が最適な解決方法なのでしょうか。次からは雨漏りの発生原因と補修方法ならびに塗装工事では解決できない理由について見ていきましょう。
雨漏りがするということは結局のところ、雨水が浸入する隙間があるということです。
当たり前の理屈ですよね。形を持たない水はわずかな隙間さえあればどこからでも浸入してきます。
お住まいにはこうした隙間からの雨漏りを防ぐためにシーリングや雨仕舞による仕上げがなされるわけですが、そうした箇所はお住まいの弱点でもあり劣化によって不具合が発生すれば即座に雨漏りへと発展してしまう可能性があります。それはどのような場所なのでしょう、以下をご覧ください。
外壁材同士の継ぎ目
窓サッシの周辺
屋根の水切り板金まわり
こうした隙間には「シーリング」が充填されているため、雨水が簡単に浸入することはありません。
しかしシーリングは紫外線に弱く、新築から約5~7年で劣化が顕著となり、ひび割れを起こしたり、裂けたりすることがあります。シーリングが劣化していると雨水が外壁材や屋根材の内側に入り込んでしまい、建物内部で雨漏りが起きるようになってしまいます。
また棟板金などは釘で固定されていますが、経年によって釘が抜けてくることで板金が浮いてしまい隙間を作ってしまう事があります。
屋根や外壁に発生するひび割れも雨水が付け入る「隙間」です
またそれ以外でも「隙間」ができてしまう事があります。
例えばモルタル外壁は地震の揺れや建物の歪みなどで深いひび割れが発生することがあります。また屋根材についても塗膜が剥がれて、劣化することで割れが発生することもあります。それ以外にも飛来物が当たったなど突発的な外的要因で外装材が割れてしまう事もあるでしょう。
いずれにしても欠けやひび、割れを放置することは厳禁ですよね。万が一、外壁や屋根に隙間ができて雨漏りが起きている場合、まずは隙間を塞ぐ補修工事が必要です。
シーリングが劣化し、雨水の浸入口を作ってしまっている場合は古いシーリングを剥がして新しいシーリングを充填しますし、釘の浮きによって隙間ができてしまっている場合は新たにビスを打ち込むなどして固定します。
モルタル外壁に雨漏りを誘発するほどの大きなひび割れ(クラック)ができている場合には樹脂モルタルを充填し外壁を補修します。
また割れたり欠けたりしている外壁材や屋根材は、新しい部材と部分交換が必要となることもあるでしょう。
状況や箇所によって適切な補修方法は違いますがいずれも塗装で解決できる不具合ではないということはお分かりいただけますよね。
雨仕舞(あまじまい)とは雨を受け流すしくみのことです。
建物は外壁材や屋根材、シーリングなどによって雨から守られていますが、どんな外装材も雨が大量に当たり続ければダメージがどんどん蓄積されてしまい劣化も早まってしまいます。そのため、建物にはあちこちに雨仕舞が行われており、
雨が正しく受け流されることによって外装材が受ける雨のダメージを軽減しています。
屋根や外壁に施工されている雨仕舞としては主に、以下が上げられます。
屋根の頂点に取り付けられている棟板金
外壁と屋根の取り合いに設置された 水切り金具
雨水の通り道を作るための谷板金
ケラバや軒先に設置された水切り金具
サッシ周りのシーリング
基礎と外壁の仕切りにある水切り金具
これらの雨仕舞が正しく機能しないと外壁材や屋根材に雨水が長時間浸るようになってしまい、外装材やシーリングの劣化が早まって雨漏りが起きやすい家になってしまいます。
雨仕舞は雨漏り防止のためには欠かせない仕組みであるため雨漏り補修の際は腐食した箇所やひび割れ箇所の補修だけでなく「家の雨仕舞が正しく機能しているか」もセットで点検が必要です。
やはり、これら雨仕舞の不良で起きた雨漏りも塗装工事では直すことができないことはご理解いただけるのではないでしょうか。
外壁や屋根には「一次防水」「二次防水」という考え方があるのはご存知ですか?
初めて聞いたという方もきっと多いですよね。
外壁と屋根はそれぞれの内側には必ず防水シートが敷かれています。外壁材や屋根材が雨や紫外線をガードしていますが、万が一雨が内側まで入り込んでも、内側に敷設されている防水シートが建物内部への浸水を防ぐという仕組みになっているのです。つまり屋根材や外壁材といった一次防水、そして防水シートという二次防水によってお住まいは雨水の浸入を防いでいるのです。
しかし外装材、またそれぞれの防水シートもいつかは寿命を迎えてしまいます。寿命が長いもので50年程度持つものもありますが、新築時に使用されているものは15年~20年程度です。
もし「剥がれ」や「破れ」のような不具合があり、防水シートで浸入を防げなかった雨水は、建物内部に浸入することはおろか、最悪、構造部分を傷めつけ腐食させてしまうことにもつながります。
塗装工事は外装材の表面を保護する工事ですので、当然その
内側にある防水シートまでは補修することができません。外壁・屋根の下地や防水シートが劣化している場合は、塗装ではなく張り替えや葺き替えといった大規模なリフォームが必要となり、やはり塗装では解決できないのです。
塗装工事は新築から約10年、その後は塗料の耐用年数に応じて定期的に行います。
雨漏りが塗装で直せないといっても、塗装は塗装で必ず行わなくてはいけない工事ですよね。
塗装工事も、また雨漏りがあれば雨漏り修理もお住まいにとっては必要なのですがそれを一緒と考えるのが失敗の素なのです。
塗装=雨漏り修理という勘違いが「費用を掛けたのに雨漏りが直らない」「工事をしたのに直らない」といった後悔を生み出すことになってしまうのです。同じ外装工事ですが、目的もその中身も違うものだと認識しておきましょう。
また屋根においては塗装を行ったことによって雨漏りが始まるケースもあるのです。信じられない話かもしれませんが
塗装が雨漏りの原因を作ってしまうということです。安易に業者の口車に乗ってはいけないということがよくわかりますよね。
「塗装工事で雨漏りは直ります」という業者がいるのはなぜなのか?
まれに「外壁塗装でご自宅の雨漏りを直しましょう」と提案する業者もいるようですが、ここまでお読みいただいた方ならもうお分かりですよね。
このような提案の仕方は誤りです。
ではなぜこのような提案をしてしまう業者がいるのでしょうか?
万が一にでも言い間違い、もしくは聞き間違いでしょうか。もしそうであれば杞憂かもしれませんが、雨漏りを相談したのにも関わらず「塗装が雨漏り解決の手段」であるという提案内容をしてきた場合は残念ながら「雨漏り修理について知識のない業者」と言わざるを得ません。塗装しか知識や経験のない業者なのかもしれません。
お住まいの外装工事には塗装以外にも屋根工事や防水工事、板金工事、瓦工事など様々あり、専門性も工事を行う職人もそれぞれ違います。(今は多能工の職人さんもいます)
雨漏りは、その原因があり、解決策として板金工事が必要な場合もあれば、瓦工事が必要な場合もあります。
原因がわからないのにも関わらず「塗装で雨漏りが直る」と提案をしてくる業者はそもそもいい加減ですし、原因を調査した上で塗装を提案してくる業者はお住まいの構造を熟知していない知識や経験不足の業者ということになります。ぜひ業者選びの一つとして覚えておくようにしてくださいね。
塗装を専門に行っている業者さんであっても、雨漏り修理に長けた業者さんも当然いらっしゃいます。
雨漏りに関する資格や調査手法などを学びお客様のお役に立ちたいという心意気で雨漏り修理について研鑽を積んでいる塗装業者さんも実に多くいらっしゃいますから「塗装業者さんは雨漏りが直せない」という誤解は決してしないようにお願いします。
「雨漏りを直すために棟板金の交換を行いましょう、また新築から15年も経過していますから併せて屋根と外壁塗装も一緒に行いましょう」という提案をしてくれる業者であれば塗装工事とは別に雨漏り補修工事もきちんと行ってくれる可能性がありますよね。
でも雨漏り修理や屋根や外壁の工事が初めてだと「雨漏りをしっかり直してくれる業者」かどうか判断できるだろうかと不安ですよね。 雨漏りは早期解決が肝心です。不必要な工事を行ったばかりに雨漏りを進行させないためにも、雨漏りについて点検や見積もりをお願いする際にはどのように相談すればよいか最後に見ていきましょう。
「塗装工事と雨漏り補修工事の見積もりを作ってください」もしご自宅の塗装も検討している場合は、塗装と雨漏り補修は別物だということをきちんと伝える意味でも「塗装工事」と「雨漏り補修」の見積もりをそれぞれ依頼してみましょう。
もしこういった頼み方をしたときに「塗装だけで雨漏りも直りますよ」と業者から言われた場合は、塗装工事だけしかしてもらえない恐れがありますし、そもそも解決したかった雨漏りが直らない可能性があります。必ず雨漏り箇所や不具合箇所の点検を行ったうえで、塗装とは別に雨漏り補修工事の見積もりもお願いしましょう。
「雨仕舞の不良もチェックしてもらえますか?」「雨仕舞」について伝えることで、お住まいの構造や雨水の排水の仕組みについての見識があるかどうかを確認することも可能です。
修理業者の中には、雨仕舞の不良を見落としたまま不具合箇所だけを塞いだり・交換したりするだけで終わらせてしまう業者もいます。ひどいケースでは雨仕舞という単語の意味さえ知らない場合もあるほどです。雨仕舞はお住まいの雨漏り防止のためには欠かせない仕組みです。
雨漏り修理を依頼する際は雨仕舞まできちんと点検してくれた上で適切な工事の提案をしてくれる業者を選ぶようにしましょう。 点検に来られた担当者にはぜひ「雨仕舞も点検してください」と伝えてみましょう。
雨漏り修理は専門的な知識や経験が必要だということをご理解ください
雨漏りが起こったことによって初めて屋根や外壁に注意が向いたという方も少なくないかもしれませんね。普段から「なぜ塗装を行うのか?」なんて考えることもないでしょうから、業者から「雨漏りは塗装で直せます」と言われれば、そういうものかと思ってしまっても無理はありませんよね。
ただご覧のように外壁や屋根の塗装は、あくまでも外装材の防水性や美観を回復するために行う工事です。
もちろん屋根材や外壁材の防水性がなくなれば雨水を吸い込み、下地を傷めつけ雨漏りの原因を作ってしまう事にもなりかねませんが、現在お困りの雨漏りを解決するためには原因に合わせた雨漏り補修工事が必要であり、塗装工事は雨漏りを解決するためのものではないのです。
「雨漏り補修工事」と「塗装工事」は区別して考えることが大切なのです。
屋根塗装・外壁塗装で雨漏りが直らない理由と塗装の正しい目的まとめ
外壁塗装、屋根塗装の目的はお住まいの美観回復及び防水性の回復であり雨漏りを直すことではありません
シーリングの不具合、板金の外れ、防水紙の破れなど雨漏りの原因は様々ですが塗装でそれらの補修を行うことはできないため原因に応じた適切な補修が必要となります
「費用をかけたのに雨漏りが直らない」といった後悔を生まないよう雨漏り補修と塗装工事は別物だという意識を持ちましょう
「塗装を行えば雨漏りが直ります」という業者は知識や経験不足を否定できません。専門的な知識が必要となる雨漏りを依頼するには不安が残ります
雨漏り修理を依頼する際は、こちらから「雨仕舞の点検までしっかり行うように依頼する」、塗装も同時に検討している場合は「塗装と雨漏り補修が別とわかるように見積もりを依頼する」といった工夫も必要です