お洒落な外観を演出できるドーマー窓。ヨーロッパの街に佇む家を彷彿させるような個性的な印象を受けますよね。
洋風のお住まいにマッチする意匠性が高い窓ですが、実は雨漏りを起こしやすい部分です。せっかくの素敵な窓なのに、雨漏りの原因になるなんて残念なことですよね。
そこで、ドーマーの特徴やメリットをはじめ、ドーマーが雨漏りを起こす理由や修理の実例などについて分かりやすくお伝えしていきます。
「我が家にもドーマーがあるけれど大丈夫かな?」とドーマー窓からの雨漏りを防ぎたい方、そして
「そういえば最近見つけた雨染みはドーマーが原因なのでは…」と雨漏りにお困りの方などは、ぜひご参考にしてください。
「ドーマーがどの部分かよく分からない」という方や、ご自宅の屋根にドーマーがあるのに「そんな名前だと知らなかった」という方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、まずはドーマーがどんなものなのか、特徴とメリットを見ていきましょう。
ドーマーは、屋根面に突き出るように設けられた、三角や四角の形の「小さな窓」のことを指します。そもそもはフランス語の「寝室」から来ている言葉で、ヨーロッパの建築様式としては伝統的なものです。見た目のデザインから、「鳩小屋」と呼ばれ、さまざまなデザインがあります。
また、
ドーマーと混同されがちなのが「天窓」です。屋根面に合わせて沿うように設置されて上を向いている「天窓」は、 室内側から見ると真上についています。
光を取り入れるためだけの“固定式の天窓”、通気性を確保できる“開閉式の天窓”があります。ドーマーも、吹き抜けの上側に取付けた場合、固定で開かないタイプもあるものの、開閉ができるタイプも多いです。採光や通気ができる点では、天窓と同じような目的で設置される方が多いのかもしれませんね。
ただ、
天窓は屋根の面に沿っている窓、ドーマーは屋根から飛び出ている形状の窓、というように、外観の違いがあります。
家づくりで屋根裏を作りたいとお考えの方もいらっしゃるかと思います。
ただ、
屋根の裏側は熱や湿気がこもりやすく、カビの発生も気になります。物置にするにしても、衛生面が不安で使いづらいというケースもあります。屋根裏は、単なるスペースだけにすると「暗い・湿気が溜まる」という悩みがつきものです。
そこで、
ドーマーを設けることで、明るさの確保と湿気対策の両方が叶えられます。屋根裏というよりも、一つの部屋のようなロフト感覚で利用でき、生活空間が広がるというメリットがあります。
ヨーロッパでは伝統的なドーマー。洋風の外観がお好みの方は、ドーマーのデザインは魅力的に感じるのではないでしょうか。
本来は平面であるはずの屋根に、小さい小屋のような部分がついているのは個性的ですよね。
「周囲の家々と似た雰囲気にしたくない」「海外風の家にしたい」というご希望をお持ちの方にぴったりです。
住まいのなかでも屋根の上は日当たりが良い部分ですよね。お住まいが吹き抜け構造になっている住宅なら、ドーマーを設けることで、屋内に取り込める光の量が増えます。
立地によっては、外壁にある窓だけでは暗いケースもあるでしょう。ドーマーを設けると、日当たりの悪さも解消できるのがメリットです。
開閉式のドーマーなら、空気を循環させることができます。吹き抜けの上部に取り付ければ、お住まい全体の空気を循環させることができます。
湿気によるカビ対策としても効果的となるでしょう。お住まいの上側はどうしても熱気がこもりやすい箇所です。屋根のドーマーで効率的な換気が可能です。
ドーマーは「お洒落で素敵」と言われる一方で、「雨漏りしやすい」ともよく言われます。
なぜドーマーが雨漏りの原因となるのでしょうか。次に、ドーマーの雨漏りの原因をいくつか見ていきましょう
原因①.屋根形状が複雑になるドーマーは雨漏りしやすい
ドーマーは、屋根から飛び出したような形状をしているため屋根の造りが複雑になります。
建材と建材のつなぎ目は雨漏りしないよう特に注意して施工される部分ですが、
屋根とドーマーの接面であるこの「つなぎ目(取り合い)」が増えることが雨漏りしやすい要因です。もちろん、施工時には雨が入らないよう、
雨水を処理する目的で「雨仕舞」がきちんと施されています。しかし
経年による劣化は防ぐことができず、結果として雨漏りリスクは高いと言えるでしょう。
傾斜のついた屋根面に小屋のように設置されているドーマー。そのドーマーにも、小さな屋根がありますが
形状によっては勾配が緩く、排水性が悪いことも多いです。それが雨漏りの原因になることもあるのです。
日本では、ドーマーはまだまだ一般的ではありません。そのため、ドーマーの施工実績がほとんどない業者による施工不良が原因で雨漏りをするケースもあります。
そもそも雨漏りしやすいという特徴を持つドーマーの設置には、「ドーマーの特徴をきちんと理解する」「雨仕舞の処理をしっかり行うこと」が求められます。
しかし、ドーマー施工の経験不足では不完全な工事となるリスクも高く、雨漏りを引き起こす可能性もあるのです。
屋根面から突出しているドーマーは、強風や台風の影響を受けやすい箇所です。そのため
ドーマーの屋根、外壁、窓まわりなどはその他の部分よりも劣化が早く進みがちです。ドーマー部分の屋根材の剥離、棟板金が飛ぶ、ケラバがめくれる…など、強風で破損したことが原因で雨漏りが起こるケースもあります。
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以上のように、ドーマーは「複雑な屋根形状」「取り合いが多い」「勾配が緩め」など、雨漏りを引き起こす要因がただの屋根より多いことを念頭に、通常よりもメンテナンスを意識しなければいけません。
「これまでメンテナンスを怠っていた」というケースは特に注意しましょう。
ドーマーで要注意の部位とは?点検項目やメンテナンス方法とは?
ドーマーには、雨漏りを起こしやすい部位がいくつかあります。点検やメンテナンス方法も軽くおさえておきましょう。
ドーマーの棟は、屋根の棟と同様に住まいの最も高いところにあります。建物の最も高い箇所は風荷重が大きく負担がかかるため、ドーマー設置時にはそれを踏まえたしっかりした工事が行われています。
ただ、
太陽や雨風などの影響を常に受け続けているうち、固定している釘が錆び劣化するなどして耐久性が弱まってしまうのです。板金を固定している釘が緩んでくると、そこから雨水が入り込み、固定のための貫板が腐食していきます。さらに、そこから
内部へと雨が浸入することで屋根下地が傷んでしまうのです。またそんなときに強風が引き金となって、
棟板金が剥がれるケースもあります。風によりパタパタという音が出て、剥がれに気づくこともあるでしょう。
特に、
台風や強風の後には、板金の飛散や剥がれがないかチェックしましょう。瓦屋根の場合も、棟瓦のずれや浮きが起こっていないか注意が必要です。
ドーマーと屋根の接合部分、取り合いは一番の要注意箇所です。「ドーマーと屋根」に限らず、「屋根と外壁」「外壁と窓周り」など異なる部材を接合している箇所は雨漏りのリスクが高い部分と言われています。通常、内部の防水紙をしっかりと立ち上げたり、隙間に板金を取り付けるなど、雨が入りこまないように「雨仕舞」という処理が施されています。しかし、
経年劣化で生じた隙間から雨水が入り込むことがあります。下地が腐食し被害が大きくなる前に、早めに対処しましょう。
ドーマーには窓がつきもののため窓付近からの雨漏り例が多くあります。通常の窓と同様、
パッキンや窓の周りに充填されたシーリングの劣化、窓周りの外壁ひび割れ、サッシの歪みなどが原因で雨が入り込むことがあります。ドーマーに多いルーバー型のサッシなどは気密性が低く特に雨漏りの原因になりやすいタイプです。
修理にはシーリングの充填しなおしだけで対処できることもありますが、周りの外壁部分の張り直しや窓枠の取り替えが必要なこともあります。
谷板金とは、ドーマーの取り付けられた部分にできる屋根と屋根の接合面です。文字通り「谷」となっているため、
雨水が流れ集中し溜まりやすく、雨漏りが起こる確率が高い箇所と言えるでしょう。谷には雨が正しく流れるよう板金が取り付けられていますが、
雨が降るたびに板金は雨の影響を多く受けるため、傷みが見られるようになります。板金はガルバリウム鋼板が使われているケースが多いですが、
劣化がひどくなると穴が開いたりゆがんだりします。穴や隙間が発生すると雨漏りのリスクがかなり高まります。
谷板金の下地には防水紙が設けられているものの、それにも寿命があるため、いつまでも万全な雨漏り予防になるわけではありません。
板金の劣化はもちろん、防水紙や下地の劣化にも注意が必要です。
点検は専門業者に依頼するべきですが、目視で確認できる範囲で、不具合がないかを定期的にチェックしてみましょう。
実例1
ドーマーと屋根との取り合い部分の板金剥がれ補修工事
10年ほど前に、屋根カバー工法でリフォームをされたというお住まい。
ドーマーと屋根の取り合いに施されていた板金が、
風の影響でめくれ変形、穴もあいてしまいました。
めくれて剥がれてしまったところから腐食している木材がのぞき、すでに雨水が浸入している様子が一目瞭然です。このままではめくれかかっている板金も台風や強風でさらに剥離するかもしれません。
めくれて変形していた板金を撤去しました。中のコンパネの傷みはかなりのものでした。
このように
腐食でボロボロしたコンパネでは、板金の固定力が弱まります。風の力にも耐えられなくなるので、浮いてどんどん水が浸入してしまうことを防げません。新しい下地に交換するために、撤去していきます。
垂木を新しいものにし、コンパネを乗せるための強度が高まりました。
コンパネだけ新しくしても、その下が傷んでいれば雨漏りのリスクが高まります。
垂木もコンパネも新品となったので今後の耐久性も安心です。
雨漏り防止の要とも言える防水シートを貼ります。これで、板金が万が一浮いて隙間ができても、新品の防水シートのおかげで雨漏りをおさえることができます。
次はいよいよ板金の取り付けです。板金職人さんの高度な技術で、こ瓦の形に合わせて加工することができました。
立ち上げた防水シート、折り返した板金で棟瓦との取り合いから雨が入らないように、丁寧に施工します。
最後は、
取り合い部にコーキング処理を施します。めくれあがったままのときと比べると、水が入り込む隙がありません。風で板金がめくれる不安や、雨が入りこみさらに木材が腐食するリスクを減らすことができました。
落ちていた瓦を発見されたお客様からの点検の依頼を受けました。洋風でお洒落なドーマーが印象的です。お客様のお宅は、軒部分から立ち上がるように取り付け られたウォールドーマーです。
屋根にのぼって点検をしたところ、ドーマーの棟瓦に破損が見られました。とても素敵なドーマーですが、破損した部分から水が入り込んでいるため、早くに補修しておかなければいけません。
棟瓦は、内部の貫板(ぬきいた)」と呼ばれる木材に釘を打ち込み固定されていましたが、経年により釘の頭から伝わった雨水が劣化を促進させ木材がかなり腐食してしまったようです。
釘が打ちこまれていた木材に亀裂が発生、土台の漆喰にもひび割れが見られます。
固定力が失われつつあったところに、強風や飛来物が引き金となって棟瓦が飛散したと思われます。
棟瓦をいったん取り外して補修してから元に戻す「取り直し工事」を行います。棟をしっかり固定するために土台を作り直す工事です。
貫板と漆喰を新しくすることで、棟瓦がしっかり固定できる土台となりました。今後、強い風がきたときに剥がれるリスクが減ります。
お洒落なドーマーを安心してお使いになるために定期的な点検を
採光や通気、高い意匠性などを叶えてくれるドーマーですが、
屋根の凸凹が増えることで雨漏りしやすいと言われています。お住まいにドーマーがあるときは、まずは特徴と雨漏りリスクをしっかりとおさえておきましょう。
ドーマーはまるで小さな家が屋根の上に載っているようなもの。それだけにドーマーの雨漏り原因はひとつではありません。
原因を特定して、それに合わせた補修をするには、詳しい地域と様々な観点での点検が必要です。ヨーロッパでは伝統的なドーマーも、日本では珍しい建築です。そのため、ドーマーの知識と施工実績が少ない業者も多いでしょう。
点検と補修のどちらも、ドーマーの雨漏りリスクを理解していなければ正しい判断が難しくなります。アメピタでは、これまでにたくさんのお客様宅で屋根の点検と補修を行なってまいりました。
すでに雨漏りに悩んでいるご相談はもちろんのこと、「雨漏りを未然に防ぐメンテナンス」や、「原因の分からない雨漏りの調査」なども承ります。お気づきの点があれば早めにご連絡ください。
屋根ドーマー雨漏りの危険性と修理方法のまとめ
ドーマーが設置された屋根は作りが複雑になるため雨漏りリスクが高いと言われます。
排水性の悪さ、施工不良、強風や台風の影響を受けやすいことから雨漏りになりやすいのがドーマーです。
ドーマーを雨漏りさせないために特に次の部分の点検が必要です。
棟(むね)
取り合い
窓周り
谷板金
ドーマーは小さな家のようなもの。雨漏り原因も多岐に渡ります。点検には正しい知識と様々な観点からの点検が必要です。
おしゃれなドーマーを雨漏りさせないために、目視でのチェックと業者による点検を定期的に行いましょう。