
屋根勾配(角度)と雨漏りの関係?ガルバリウム・瓦で必要な最低勾配


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屋根といえば、角度のついた三角屋根を連想する方も多いのではないでしょうか。同じ屋根でも、形によって外観の印象がだいぶ変わります。
新築の際、「自分なりに屋根の形状や傾斜にはこだわった」という方、「屋根のことは難しいから建築業者にお任せにした」という方など、さまざまなお考えがあるかと思います。
実は、屋根勾配(角度・傾斜)は、雨漏りを防ぐためのカギを握り、雨漏りの起こりやすさに関係しているのはご存知でしょうか。
ただ、屋根勾配は適当に決めるわけではなく、屋根材の種類ごとに適した勾配が異なります。勾配について深く考えなかったばかりに、雨漏りを起こしてしまうケースもあるのです。
今回の記事では、屋根材と勾配との関係について詳しくお伝えしていきます。
「雨が降るたびの雨漏りは勾配のせい?」「我が家の勾配の場合、どんな屋根材でもリフォームできるのかな?」など、雨漏りにお悩みの方や屋根材のリフォームをご検討している方も、ぜひお読みください。
屋根の勾配とは、屋根の傾きや角度を表したものです。傾斜が急であれば「急勾配」、緩やかであれば「緩勾配」と言われています。
屋根の勾配によって、お住まいの見た目の雰囲気はかなり違います。急勾配の屋根の場合、屋根の位置がかなり高く、お住まいの容積も増えることから、「家が大きく見える」「重厚感のある外観になる」など外観に迫力が感じられるでしょう。
一方、緩やかな勾配は、シンプルなデザインのお住まいに多く、スタイリッシュな外観となります。
傾きをつけることで屋根の上に降った雨水の流れ方が変わります。雨水が流れづらく溜った状態が長引くと、浸水や汚れの付着による屋根材の劣化が進み、雨漏りのリスクが高まります。
そのため、屋根材によって適切な勾配があり、それをもとにお住まいの状況を考慮していかなければなりません。後から雨漏りに悩まないように、屋根の上で雨水が溜まりづらい、水はけの良い屋根を前もって屋根材の種類も含めて考えることが大事です。
屋根勾配の表記にはいくつかの方法があります。
新築やリフォームのときに屋根勾配について見聞きすることもあるかと思いますので、あらかじめ表記に関して知っておくと安心につながります。
日本の建築現場では、尺や寸という尺貫法を使って長さの単位にしています。一般の人にはあまり馴染みのない単位かもしれません。
尺貫法では、1寸が約30.3mmです。屋根勾配における尺貫法勾配とは、「水平の長さ10寸(303.03mm)に対し、垂直に何寸上がった角度がついているか」を表記する方法です。
分数勾配も、水平の長さと高さとの関係性を分数で表した勾配です。約分して表記されることもあるので、分数表記で「4/10」と「2/5」は同じ勾配を指します。
角度勾配は、実際の角度を表した表記です。
「角度の方が分かりやすい」と感じる方も多いかもしれませんが、建築現場においてはあまり使われません。なぜなら、角度で表す正確な数値は、建築後の結果として測られるものだからです。
しかも、実際に角度を測る場合、「16.6992度」などのように細かい数値で複雑に感じることから、建築業界で使われることが少ないです。
勾配の表記が「寸」や「分数」だと馴染みがなく分かりにくく感じますよね。角度の方が、なんとなくイメージしやすい方が多いかと思います。
それでは、実際にどのくらいの傾斜なのか見てみましょう。
このように、3寸勾配と9寸勾配を比べると2倍以上もの角度の開きがあることが分かります。
屋根勾配は「迫力のある外観にしたいから急な方がいいかな」「平坦にしてシンプルにしたい」などのように、ご自身の好みだけでは決められません。
実は、素材が持つ雨への耐久性などが異なるため、屋根材の種類によって必要な勾配が異なります。そのため、勾配を決めるときには「どのくらいの勾配にしたいか」というよりも、どの屋根材を選ぶかで勾配がある程度定まると言ってもいいでしょう。
屋根の種類 | 必要勾配 |
---|---|
金属屋根(縦葺き) | 1寸以上 |
金属屋根(横葺き) | 3寸以上 |
スレート屋根 | 3寸以上 |
アスファルトシングル | 3.5寸以上 |
陶器瓦 | 4寸以上 |
コストパフォーマンス面や軽量さから、新築やリフォーム問わず人気のあるガルバリウム鋼板をはじめとした金属屋根は、比較的緩やかに葺くことができます。
金属屋根の葺き方には、“縦葺き”と“横葺き”があります。縦葺きの方は、必要最低勾配は1寸以上です。1寸勾配は角度にすると約5.6度とかなり緩やかな屋根のため、「雨漏りが起こらないか」と心配かもしれません。
しかし、縦葺きの場合、屋根の頂部から下に向かって一枚の金属が、しかも雨水が流れるのと同じ向きに取り付けられています。傾斜が緩めでも雨水が溜まりにくい葺き方なのです。
金属屋根の横葺きは、地面と平行の向きに屋根材を取り付けていく葺き方です。
横葺きの金属屋根の必要最低勾配は3寸以上。縦葺きと比べて、横に凸凹ができる葺き方のため、勾配が緩すぎると雨水が溜まります。そして縦葺きと比べ屋根材同士の境目も多いです。
そのため、同じ「金属屋根」だとしても、縦葺きと横葺きでは必要最低勾配が異なるのです。
主成分がセメントのスレート屋根材は、塗装で防水性を高めなければなりません。必要最低勾配よりも緩く葺いてしまうと、雨水や湿気の滞留により塗膜の劣化を早める原因となるでしょう。
また、スレート屋根材は10年程度での塗り替え、5年前後ごとに苔やカビの発生状況の点検など、頻繁なメンテナンスが必要です。急勾配にすると、点検時でも足場を組まなければならない可能性もあります。点検や簡単なメンテナンスが足場なしでも対応しやすい勾配を考慮することが大事です。
ガラス繊維にアスファルトを浸透させ、シート状にした屋根材がアスファルトシングルです。海外ではメジャーな屋根材ですが、日本でのシェア率は数%程度しかありません。
アスファルトシングルの表面には自然石が吹付けられており表面がザラザラと、雨水の流れが滞りやすいです。
陶器瓦は、粘土をもとに高い温度で焼き上げた耐久性が高い屋根材です。塗り替えがいらないので、メンテナンス頻度も少ないのが特徴です。
厚い瓦を重ねて葺くことで、実際の瓦は屋根面よりもやや角度が緩くなります。そのため効率よく水を流すにはある程度の勾配が必要です。
ここまで必要最低勾配をお伝えしましたが、どの屋根材でも4寸以上あれば問題ないことになります。屋根材ごとの必要最低勾配をクリアしていれば、その範囲内で勾配を考えることができます。それならとりあえず4寸にしておけば問題ないのでは?とも思いますが、それぞれ良い点と不利な点もあるのです。
一般的に、6寸以上を「急勾配」、3寸以下を「緩勾配」、その中間を「並勾配」としています。勾配が急な場合、そして緩い場合のそれぞれメリット・デメリットもおさえておきましょう。
6寸勾配(約31度)以上の勾配が急勾配と呼ばれています。
3寸勾配(約16.7度)以下を緩勾配と言います。
並勾配は急勾配と緩勾配の中間で、3寸勾配(約16.7度)以上~5寸勾配(約26.6度)以下を指します。日本では並勾配のお住まいをよく見かけます。4寸勾配以上ならほとんどの屋根材に適しているため、間をとって「4寸勾配」にする方も多いです。
ここまでご説明したように、確かに勾配が急なほど雨がスムーズに落ちていくメリットはありますが、緩い勾配だからといって絶対に雨漏りするわけではありません。
なぜなら、緩い勾配で取り付け可能な屋根材は、雨が流れやすく浸入しにくい特性を備えているからです。
つまり、屋根材それぞれが持つ「必要最低勾配」に合わせていることで、雨漏りのリスクを避けることができるのです。
新築、リフォーム問わず、屋根材を選ぶときには勾配についても目を向けておくことが大事だということをご説明してきました。
建物を建てる際、法規制によって希望の勾配にできないケースもあります。
特に、第一種低層住宅専用地域や第二種低層住宅専用地域など、2階建てくらいの低い住宅が立ち並ぶ地域では、建物の規模に関する規制が厳しめです。
そのなかには、敷地が面する道路や隣地への「採光・通風」などへの考慮から、道路斜線制限、北側斜線制限など高さに関する制限がさまざまあります。
そのため、建築基準法に基づき、建物や敷地などと照らしながら勾配が決められることもあります。
年数を重ねるうちに劣化する屋根材は、定期的な塗装メンテナンスのほか、新しい屋根材を重ねる「カバー工法」、古い屋根材を撤去して新しい屋根を葺く「屋根葺き替え」などのリフォームが必要になってきます。
新しい屋根材を選ぶとき、現在の勾配によって選択肢の制限を受けることもあります。
たとえば、「ガルバリウム鋼板の縦葺きから横葺きにしたい」という場合です。
勾配1寸程度の縦葺き屋根から、必要最低勾配が3寸以上の横葺きへのリフォームはできません。
凸凹により水の流れを邪魔してしまう横葺きは、1寸程度の緩勾配では水はけが悪くなるからです。
選ぶ屋根材と勾配が適切かどうかの判断がしっかりできていなければ、今後のお住まいの耐久性にも影響します。
また、4寸以上の勾配があれば、屋根材の選択肢は増えます。
ただ、重い瓦屋根から軽い金属屋根にするといった軽量化をはかるリフォームは可能ですが、その逆は耐震性の問題から葺き替えは不可能です。
瓦屋根と金属屋根では4倍にもおよぶ重量比があるため、そもそも軽い屋根に合わせた構造に、その何倍もの瓦屋根を取り付けることができないからです。
<勾配が緩い屋根に横葺き金属屋根が施工されていた例>
雨漏りがあるので点検してほしいとお問合せをいただき急いで伺いました。屋根はガルバリウム鋼板横葺き屋根でしたが、どう見ても勾配が足りていない状態なのが一目で分かります。
測ってみると1寸7分勾配でした。鋼板の上には水が溜まった跡がいくつも見られます。屋根に上がってみると下地がふかふかしていて劣化している様子も分かりました。
めくってみると案の定防水紙が破れ雨が浸入している状態です。野地板と防水紙を張り直し、セキノ興産の立平ロックという縦葺き製品で葺き替えをいたしました。
<雨漏りを起こしていたスレート屋根を金属縦葺きにリフォームした例>
天井からの雨漏り発生ということでお伺いしましたが、現状のスレート屋根には割れなど特に目立った問題は見られませんでした。
しかし屋根の勾配が2.5寸ほどと緩めで水はけが悪いと思われます。新築からこれまで屋根のメンテナンスは行なっていないとのことで下地の防水紙が傷んでいるのでしょう。
月星商事さんのタフビーム333で縦葺き施工をすることで水の流れを良くし勾配の緩さを補い、雨漏りに強い屋根にするリフォームを実施いたしました。
屋根勾配は、工事により変更することができます。
ただし、現在の屋根材と骨組みをいったん撤去し、屋根材の下地を再び組み直すという大がかりな作業をともないます。高さの変更をするときには、法に基づいた設計の見直しや確認申請などの費用がかかるほか、足場費用や新しい屋根材の費用など数百万ものお金がかかります。
簡単な工事ではないため、業者選定もかなり重要になってきます。
屋根勾配を知ることは、お住まいを大切に守ることにつながります。
屋根材に合わせた勾配にしなければ、雨水を効率よく流せず雨漏りのリスクが高まるでしょう。
屋根の勾配を決めるときは「建築業者に勧められたから」とこだわらない方もいらっしゃるかもしれませんが、今後のメンテナンスやリフォームともかかわるため、内容をきちんと理解することをおすすめします。
また、すでに雨漏りに悩んでいる方は、「屋根材と勾配の相性が悪いこと」が原因となっている可能性もあります。勾配に合わせた屋根材でなかった場合、カバー工法や葺き替えなどで適切な屋根材にすることで問題が解決できるかもしれません。
屋根勾配(角度)と雨漏りの関係?ガルバリウム・瓦で必要な最低勾配のまとめ
屋根の勾配は雨漏りリスクと密接な関係があります
屋根材によって必要な最低勾配が変わります
・金属屋根(縦葺き)1寸以上
・金属屋根(横葺き)3寸以上
・スレート屋根 3寸以上
・アスファルトシングル屋根 3.5寸以上
・陶器瓦屋根 4寸以上
急勾配でも緩勾配でもそれぞれにメリットデメリットがあります
新築や中古住宅購入の際も今後のリフォームのことを視野に入れ勾配のことを理解しておきましょう
屋根リフォーム際には勾配と屋根材の関係に注意が必要です