2022年1月1日より、新築の建物については全ての瓦の固定が義務化されます。

近年相次ぐ大型台風により多くの屋根瓦が飛散・脱落の被害に遭ったことを踏まえ、建築基準法の告示基準の見直しが行なわれたためです。

今回の改正は新築に関してのものなので、これによってもう既にお住まいの瓦屋根をどうにかしなければいけない、ということではございません。

これまで瓦は固定されていなかったの？と驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。
工法にもよりますが、現在既に建築されているお住まいの屋根瓦は、その全てが釘などで打ち付けてあるわけではないのです。
特に築年数が長いお住まいの場合、ほとんど土だけで瓦が固定されている場合もあります。

「それなら、現在瓦屋根である我が家はどうなってしまうの？安全ではないの？」
とのご心配も当然ありますよね？

このページでは、今回の改正のポイントをご説明するとともに、瓦の施工方法から、なぜ雨漏りになってしまうのかの解説、さらに瓦屋根のリフォームをお考えの方に役立つ情報をお届けします。

新築建物の瓦全固定義務化とは

2016年の熊本地震
2018年の台風21号
2019年の台風15・19号…
大小の自然災害による被害が絶えない日本。
特に上記のような大型地震・台風などの際には、報道による映像や写真で、屋根瓦の大部分が脱落してしまった家や、ブルーシートで屋根を覆われた家々が映し出されました。記憶に新しい方もいらっしゃるのではないかと思います。

台風・地震など自然災害による被害が絶えないなか2022年より瓦の固定が義務化されます

多くの方の中で「重い瓦屋根は地震や台風の際に危険なのではないか？」との印象が根付き、実際、軽量な金属屋根材が近年注目を浴びています。

そんな中、2022年より新築住宅において全ての瓦の固定が義務化されることとなりました。これにより瓦屋根の更なる耐震性・耐風性アップが期待されます。
では、これまでの瓦屋根は安全ではないのでしょうか？
いいえ、決してそんなことはないのです。

瓦屋根施工方法の歴史

まずは瓦屋根がどのように施工されているのか、ご紹介します。

瓦に限らず、屋根は母屋（もや）や垂木といった骨組みの上に、野地板が敷かれ、さらに下葺き材、そして一番上に屋根材が葺かれるのが基本的な構造です。

瓦屋根の場合、1923年の関東大震災以前は「土葺き」という工法が主流でした。瓦の下には粘度の高い土が敷き詰められ、そこに瓦を押し付けていくような施工の方法です。
それだけ？と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし実際土葺きにはある程度の安定性があり、断熱性も高く、また土によってあえて屋根を重くすることで家全体のバランスを保つことが出来るのです。
これ以降徐々に土葺きの瓦屋根は減っていきますが、築年数の長い住宅では今なお土葺きの屋根も珍しくなく、いかに丈夫であるかが伺えます。昔の方の知恵ですね。

ところがそれでも関東大震災では多くの瓦屋根に被害が出たため、既に使われつつあった「引掛桟工法」が推奨されるようになります。野地板の上に防水紙を敷き、瓦桟を設置、その瓦桟に瓦を引っ掛けていく方法です。
さらにその後、けらばや軒（屋根の端）部分など一部の瓦は釘や銅線で留めつけることが義務化され、現在多くの瓦屋根はそのような方法で施工されています。

また1995年阪神淡路大震災後に改正された建築基準法を受け、瓦屋根施工に関する新たなガイドラインが発行されました。これにより留め付けを推奨する瓦の枚数が増え、特に崩れやすい棟（屋根の山部分）に関してもこれまでよりも強固な施工方法が使われるようになりました。（ガイドライン工法）

こうして未曾有の自然災害等で得た教訓を受けながら、瓦屋根の施工方法も進化してきました。
気を付けたいのは、こうしたガイドラインには強制力はなく、絶対ではないところです。その年以降の建築だからといって、必ずしもその時の最新の施工方法で建てられているとは限りません。

全瓦の固定義務化とは？何が変わるのか

そして近年起こった冒頭で挙げたような大型台風、つまり強風にも耐えられる瓦屋根のため、緊結方法に関する基準の改正が行なわれたのです。

国土交通省が発表した、2019年房総半島台風による屋根被害の分析結果を見てみると、ガイドライン工法の瓦屋根、非ガイドライン工法の瓦屋根で被害を受けた割合が大きく違うことが分かりますね。

このガイドライン工法を踏まえて、瓦の緊結について強化しようというのが今回の改正です。

ポイントは次の3つ。

桟瓦（平部の瓦）は全数を釘等で固定

軒・けらばの瓦は3本の釘等で固定

棟は下地に固定した金具に芯材を取り付け、冠瓦をねじで固定

これにより全ての瓦が固定されることになります。
安全な瓦屋根を造り維持するための、一定の基準が新たに示されたことになりますね。

瓦屋根は台風や地震に弱いの？

瓦のメリット

瓦は長く愛され、日本に住む人にとっては馴染み深い屋根材です。
それは、瓦に多くのメリットがあるからですね。特に和瓦のメリットとして、大きく以下の点が挙げられます。

●耐久性
●断熱・遮音性
●デザイン性

耐久性

和瓦は粘土を焼成して作られます。つまり、陶器と同じく焼物です。お茶碗などをイメージしていただくと分かると思いますが、焼物はとても寿命が長い素材です。長く放っておいてもいつの間にかすり減っていたり腐食してボロボロになっていたりということはありませんよね。

それと同じように、和瓦はとても丈夫で、割れたりしない限り50年以上もつとも言われます。
スレートのように、塗り替えないと苔だらけになってしまうとか、金属屋根のように錆びてしまうといったことがありません。

断熱・遮音性

瓦屋根はその構造から、下地との間の空間が他の屋根材に比べて大きく設けられます。その空気層が断熱の役割を持ち、また、その分遮音の効果も期待できます。

デザイン性

なんといっても瓦の見た目、どっしりとした重厚感と高級感に魅力を感じる方も多いでしょう。その方によって好みはあると思いますが、独特の風合いがお住まいを引き立たせます。

このように良い点も多い瓦ですが、地震や台風に不利となれば不安に感じてしまいますよね。
瓦屋根は問題のある屋根なのでしょうか？

瓦屋根の耐震性や耐風性

耐震性

最近では新築やリフォームで瓦を使う住宅は少なく、化粧スレートや金属製の屋根材がシェアを伸ばしています。理由として、それらが瓦よりも安価であるという点、瓦を葺くことが出来る職人が不足してきている点が挙げられるでしょう。
また、耐震性を考慮して重い瓦は避けられているということも聞きます。

しかし、重量のある瓦を屋根に使用しているからといって、地震の際に家が倒壊しやすいということではありません。
それは、建築基準法によって建物の耐震基準が定められているからです。
重い瓦を屋根材として使うのであれば、それに見合うよう、建物に使う柱や壁の数もしっかり決められています。屋根材が違えば家本体の造りも違うので、屋根が重いことが原因で家が倒壊してしまう、ということはないのです。

耐風性

瓦の枚数毎に釘やネジの本数が示されておりある程度の風では飛ばない造りになっています

台風・強風によって屋根材が飛ばされてしまうと、雨漏りにならないか、これ以上被害は広がらないかと、不安な日々を過ごすことになります。
先にご説明したガイドライン工法では、国土交通省が定めた基準風速に則って、瓦を何枚毎に、何本の釘やネジを使って留めるかなどが示されていますから、ある程度の風でも飛んでしまうような造りにはなっていないのでご安心ください。

また、台風時の映像などを見ると、瓦屋根だけではなく軽量なスレートや金属屋根も多く被害を受けているのが分かりますね。瓦屋根だからという理由で耐風性に問題があるということではありません。

こうして見ると、台風や地震で被害を受けてしまうのは瓦屋根そのものに問題があるわけではないということが分かります。デメリットと言えるのは、瓦は重いので落下したときに危険が多いことを注意しなければならない点です。
しかし根本的な問題となるのは、屋根や建物自体が経年劣化していたり、以前の工法で施工されていたりという場合なのです。

瓦屋根と雨漏りの危険性

ここまで読んで頂き「瓦屋根だからといってすぐにリフォームしなければいけないわけではない」ということがご理解いただけたと思います。

それでも「我が家は古い瓦屋根でどのような工法で施工されているか分からないので不安」という方も多いでしょう。
大型台風や大地震でなくても、
・強風で棟瓦が崩れてしまった
・地震で数枚瓦が落ちてしまった
となれば雨漏りが心配ですよね。
アメピタでもそのようなお問い合わせを多くいただきます。

ここでは、瓦屋根が雨漏りを起こしてしまう主な原因について解説します。
雨漏りの原因が分かっていると、突発的な瓦の割れや落下の際にも慌てずに対処できるのではないかと思います。

下葺き（防水紙・葺き土）の劣化

瓦屋根は瓦だけですべての雨を塞いでいるわけではありません。瓦同士の隙間や、1階屋根と外壁の接合部分（取り合い）などから雨が入り込むこともあります。
瓦などの屋根材は一次防水と呼ばれ、最終的に建物を雨から守っているのはその下地です。それは瓦屋根でなくても同じです。建物の雨漏りを起こさせないための最大の砦が下地となっている防水紙（ルーフィング）なのです。
ところが防水紙の寿命は瓦よりも短いので、瓦自体に問題がなく見えてもいつの間にか防水紙が擦り切れていたり破れていたりして、雨漏りになってしまったというケースが多いのです。

土葺きの下に敷いてある杉皮が劣化すると防水の役割を担えず室内に雨水が浸入する可能性が…

土葺きの場合は、土とその下に敷いてある杉皮などが防水紙の役割を持っていますが、だんだんと土が硬くなって痩せ、また雨風によって土が流れ出て減ってしまうことでその役割を担えなくなってしまいます。

下葺きの劣化。これが、瓦屋根における雨漏りの最大の原因です。つまり瓦が数枚落ちてしまったからといってすぐに雨漏りが始まってしまうというわけではありません。
しかし、瓦のズレや落下が起こると言う事はそれなりに築年数が経っていることが多いので、注意が必要ですね。

棟瓦の不具合

強風や地震の影響を受けやすい屋根の棟は倒壊した状態で放っておくと雨漏りにつながります

次に注意したいのが屋根の棟です。
棟は屋根のてっぺんや山になっている部分で、そこを保護する重要な役割を持っていますが、風の影響を受けやすく、不具合を起こしやすい場所でもあります。

比較的新しい屋根であれば棟の下もしっかり防水紙で守られていますが、古い工法だった場合は、棟の下が屋根内部に直結していることもあります。
強風で棟が倒壊してしまった場合はもちろん、そうでなくても、少しずつ棟瓦がずれてきた、棟の内部に使われている葺き土が流出してしまった、という箇所からじわじわと雨水が染み込み、雨漏りへつながってしまうことがあります。

いずれにしても、不具合を発見してから長く放っておくのは良くありません。雨漏りが起こってしまえばそれだけ修繕に費用も手間もかかりますので、まずは点検無料のアメピタまでお問合せください。≫

アメピタは雨漏り修理専門店ですが、雨漏りの心配がある屋根の点検、雨漏りを防ぐための修理も承っております。

瓦屋根のリフォームを検討される方へ

ここまで何度か書きましたが、今回の改正で、現在の瓦屋根を絶対に改修・リフォームしなくてはいけないというようなことはありません。
対象は新築の建物だけです。

中にはこれに乗じて「建築基準法が改正されたのでリフォームが必要です。」などといい加減な営業トークで屋根工事を迫る良くない業者がでてくる可能性もありますのでご注意ください。

それでもやはり、
・築年数が長く屋根のメンテナンスをしていない
・瓦がずれはじめているようだ
・既に雨漏りして天井にシミが出来ている
こういったお悩みをお持ちの方は、大きな被害に遭わないうちに屋根のリフォームをご検討ください。既に、どういったリフォームが良いのか迷っている、という方もいらっしゃるでしょう。

おすすめのリフォーム方法や屋根材をご紹介いたします。

屋根葺き替え：軽量な金属屋根

屋根の不具合を一掃する屋根葺き直しの際には新しい屋根材として金属屋根がおススメです

瓦屋根のリフォームとして行われるのが屋根葺き替えです。
瓦を撤去し、必要に応じて下地の野地板を補修・補強、防水紙を敷き直し新しい屋根材を葺きます。
・元々が土葺きだが経年で土が痩せ瓦がずれてきている
・引掛桟工法だがメンテナンスをしていないため防水紙が劣化している
このような場合、そして既に雨漏りを起こしてしまっているという場合にも、屋根の不具合を一掃してリフレッシュできます。

そこで、新しい屋根材として金属屋根を検討されてはいかがでしょうか。
金属屋根というと、「安っぽい」イメージがあるかもしれません。しかし現在は屋根材としてデザインがスマートでお洒落なものが多く出ています。断熱材一体型の製品がおすすめです。

何より金属屋根は瓦屋根に比べて重さが1/10以下、元が土葺きならそれ以上に軽くなることになるので、住宅本体への負担が大幅に軽減されることになります。

「瓦の見た目が好き」という方には、金属瓦と呼ばれる見た目の重厚感にこだわった製品もございます。

屋根葺き替え：防災瓦

現在の瓦屋根から葺き替えを検討している。でも新しい屋根材もやっぱり瓦がいい！
そういった場合には、ぜひ「防災瓦」をお選びください。

防災瓦の特徴

・かみ合わせ構造

防災瓦の最大の特長は、その構造です。瓦は下の瓦にやや重なるように上の瓦を葺いていきますが、防災瓦なら付いている突起をかみ合わせることで上下の瓦同士のロックが可能です。これにより風や揺れでのズレや落下を防ぐことができるのです。

・標準でビス留め

防災瓦には標準で1枚1枚の瓦をビス留めする施工方法が定められているので、防災瓦を選べば必ず全ての瓦が固定されることになります。
かみ合わせ構造とビス留めで耐風・耐震に大きな効果が期待できます。

また多くの防災瓦には、雨を効率よく流す返しやくぼみが付いているので雨漏り対策としても有効です。
現在新しく出荷される瓦の多くはこの防災瓦なので、気になる方はご確認ください。

屋根葺き直し

瓦に問題がなくても下地がボロボロの場合は下地を補修し元の瓦を戻す葺き直しが可能です

前述の通り、瓦そのものは和瓦であればとても丈夫なものであり、割れたり欠けたりしていなければ何十年と使用し続けることができます。
もし現在の瓦にこだわりをお持ちで、瓦自体に問題がないと判断できれば、屋根の葺き直しという方法も選べます。

葺き直しとは、今の瓦を一度撤去し、下地を補修・補強した後に元の瓦を葺き直すというもので、現在と外観を大きく変えることなく屋根リフォームが出来ます。この際、瓦の固定や棟の施工工法について工事業者とご相談頂くのも良いでしょう。

屋根葺き直しが可能かどうかはアメピタまでご相談ください。

瓦屋根の改修に使える？補助制度

2022年から義務化される瓦の緊結（固定）方法に関する基準改正が適用されるのは、新築建物についてです。
しかし、
不安があるので瓦屋根をリフォームしたい
という際には補助が受けられるかもしれません。

住宅・建築物安全ストック形成事業（一部自治体）

お住まいの地域によっては、資格を持ったプロによる耐風診断の際や、耐風のための屋根葺き替え費用を補助できる制度があります。
※耐風補助制度を実施しているのは一部の自治体のみです。お住まいの自治体へお問合せください。

長期優良住宅化リフォーム推進事業

既存住宅の長寿命化や省エネ化などの「性能向上リフォーム」に対する支援制度です。
インスペクション（住宅診断）を受け、耐震性・省エネルギー性・防災性が確保される工事であると認められれば、以下の補助を受けることができます。
※詳しくは以下をご確認ください。
https://www.kenken.go.jp/chouki_r/reform_r3_1.html

定期的な点検で安心な瓦屋根に

どんなに適切・確実に屋根を施行したとしても、予測できない災害によって被害を受けてしまうことはあります。
しかしその被害を出来るだけ最小限にするために、屋根を定期的に点検しメンテナンスを行うことは忘れないようにしてください。

長寿命の瓦屋根ですが防水紙や漆喰は劣化するため定期的なメンテナンスを行うことが重要です

瓦は長寿命で、手入れがいらないとも思われがちですが、下地の防水紙や瓦を緊結している銅線、施工に使われる漆喰などは劣化します。

それらをこまめにメンテナンスしておけば、雨漏りなど起こすことなく長く安心して暮らせますし、自然災害での被害を防げるかもしれません。
突然の雨漏りや台風による被害を受け、慌てて修理を依頼し不安を抱えたまま日々を過ごすよりも、計画を立ててじっくりと見積もりを取り余裕を持って屋根修理・リフォームを迎える方が良いですよね。

アメピタは点検無料です。被害を受けてしまってからの修繕、ちょっとした屋根修理やメンテナンス、今後のリフォーム相談、瓦屋根のお悩み・気になる点などお伺いいたしますのでまずはお問合せください。≫

瓦の全固定が義務化！我が家の瓦屋根は大丈夫？おすすめリフォーム　まとめ

2022年1月より、新築建物について屋根瓦の全固定が義務化されます。