「雨仕舞(あまじまい)」と聞いてもピンとくる方は少ないのではないでしょうか?
雨仕舞は、お住まいが受けた雨水を適切に排水し、
雨漏りから建物を守るための仕組み・工夫のことを言います。
それって「防水じゃないの?」と疑問に思う方もきっと多いかもしれませんね。
しかしよく聞く「防水」と「雨仕舞」は、実は全く別物なのです。
雨漏りから建物を守るための重要な仕組み・工夫である雨仕舞について知っておくことは、正しい知識で雨漏りのリスクを減らし、お住まいの寿命を延ばすことにも繋がります。
雨仕舞のしくみや必要性、住宅に施されている様々な雨仕舞についても見ていきます。
【動画で確認「雨仕舞の仕組みと必要性」】
長い文章のページとなっていますので、内容を動画でもまとめています。動画で見たいという方はこちらをご覧ください!
↓ ↓ ↓
【動画で確認「雨仕舞の仕組みと必要性」】
長い文章のページとなっていますので、内容を動画でもまとめています。
動画で見たいという方は是非ご覧ください!
「雨仕舞(あまじまい)」とは冒頭でも説明いたしました通り、雨水が建物内に入らないよう適切に排水するために施されており、具体的な部位の名称というよりも「雨水を排水する」という「仕組み」そのものを意味する用語として使われています。
雨仕舞は「屋根の上」や「屋根と外壁がぶつかる取り合い部分」、「外壁」などお住まいの外装のいたるところに施されており、雨漏りから建物を守ってくれているのです。
しかしもちろん雨漏りは雨仕舞だけで防いでいるわけではありません。
定期的な外壁・屋根塗装や雨樋の清掃など必要に応じてメンテナンスを行い、お住まいの健康を維持しながら雨漏りを防いでいかなくてはいけませんよね。
ただしどれだけこまめにメンテナンスを行っても雨漏りから建物を守っている重要なカギの一つである雨仕舞がきちんと行われていない、もしくは雨仕舞に不具合のある建物では当然雨漏りのリスクに常に晒されてしまう事となります。
例えば屋根から流れてくる雨水を受け止め、地上へと排水する雨樋ですが、いくら雨樋を設置していても、雨水が屋根に滞留してしまっては意味がありませんよね。
雨仕舞が正しく機能している家であれば屋根で受け止めた雨水を雨樋を通して問題なく地上へと排水できますが「雨仕舞が働いてない」・「不具合がある」ことで雨水の排水を止めてしまったり、そもそも雨仕舞から雨水の浸入を許してしまう事にもなるのです。
雨仕舞と同様に、建物を雨から守るために重要なのが「防水」という考え方です。 防水と雨仕舞いは意味を混同してしまいやすい言葉ですが、2つの言葉には大きな違いがあるってご存知でしたか?具体的に見ていきましょう。
防水とは「雨水から建物を守る」ことを意味します。
防水 | 雨水から建物を守る |
雨仕舞 | 建物に当たる雨水を受け流す |
●雨水を一定箇所に留めないよう屋根の谷部に板金で雨の通り道を作る
●雨水が浸水やすい屋根と外壁の取り合い部分を板金で保護する
●防水工事時、防水層の立ち上がり部分を端末金物とコーキングで納めた
防水も雨仕舞も天敵である雨漏りからお住まいを守るために非常に重要であることはご理解いただけますよね。雨のダメージから耐える「防水」だけでなく、雨水を受け流す「雨仕舞」も適切に行われることが建物の雨漏りリスクをより低くすることにつながるのです。
防水と雨仕舞の違いはわかっても「防水をしっかりしていれば雨仕舞まで配慮する必要はないのでは?」と思ってしまう方もいらっしゃるかもしれませんね。(そんなことはないのでそのように考えてしまっている方は要注意です!)
確かに、建物は外壁材や屋根材といった様々な防水材によって雨から守られています。しかし建物の雨仕舞が機能していなければ防水材そのものの効果まで薄れてしまうことになるのです。
防水設備や機能の点検、塗替えをしっかり行っていたにも関わらず、雨仕舞の不具合に気づかなかったばかりに雨漏り被害に遭ってしまったという例は数えきれないほど存在します。知らない間に雨漏りのリスクを高めていたということにならないよう雨仕舞のしくみや必要性を理解しておきましょう。
雨仕舞の必要性1:雨仕舞を行うことで防水材が長持ちする
外壁材や屋根材、塗料といった防水材はどんなに耐久性が高くても雨や紫外線のダメージによって日々劣化を進めているため、最低でも10年ごとに点検やメンテナンスが必要です。
一般的な外壁材の耐用年数で30年程度、屋根材は15年~20年程度の耐用年数を持ちますが、表面を守る塗料の寿命は種類にもより約7~15年程度です。
定期的に塗替えを行わなければ外壁や屋根の寿命も短くなってしまいます。 また、外壁の隙間に充填されているシーリングも5~10年ほどで劣化してしまいます。
このように、どんな外装材や防水材も必ず経年劣化してしまいますので防水メンテナンスを怠れば防水性が低下し、外壁材や屋根材への含水、そして雨水の浸入など建物を雨から守ることができなくなってしまいます。
雨仕舞が正しく行われている家では、雨水が適切に受け流されるため屋根や外壁といった防水材が直接、雨水に長時間当たらなくて済みますよね。雨水によって受ける影響が少なく、ダメージが軽減すれば当然防水材も長持ちしますので、長期間にわたって雨漏りのリスクを遠ざけることにもなるのです。
雨仕舞の必要性2:雨仕舞には建物の寿命を延ばす効果もある
雨仕舞が正しく機能することによって防水材の寿命が延びれば、当然、建物の防水性が増すことになりますから建物の寿命自体を延ばすことにも繋がりますね。
また、雨仕舞によって雨水がスムーズに排水されることにより、雨が降っても建物が濡れる時間が短くなります。これによって雨水が建物のあちこちに留まりにくくなって雨漏りのリスクが減るだけでなく、雨濡れによる汚れやコケ、カビなども発生しにくい家となります。
雨仕舞の必要性3:雨仕舞の不良が雨漏りの原因になっているケースもある
「つい先日、家のメンテナンスをしたのにまた雨漏りが起きてしまった」
「家の雨漏り箇所を何度補修しても、すぐに雨漏りが起きてしまう」
などのようにメンテナンスや雨漏り修理を行ったのにも関わらず雨漏りに悩まされてしまうようなケースでは「もしかして雨仕舞が正しく機能していないかも?」という可能性も考えなくてはなりません。
あるいは修理業者が雨仕舞の不具合を見落としたまま、工事を終えてしまっているかもしれません。
雨仕舞は雨漏りから建物を守るためになくてはならない仕組みです。
雨仕舞のしくみや必要性を理解することはお客様自身が、建物が抱えるリスクや不具合について正確に理解することでもありますね。もちろん修理を依頼する際に、雨仕舞についてきちんと理解している業者を選定する際にも大変役立ちます。
間違った業者選びをしなければ「雨漏りが何度も繰り返す」といったような悲劇に悩まされることもなくなりますよね。
雨仕舞は「水切り」と呼ばれる板金を取り付けて雨を受け流したり、部材の形そのもので雨を受け流したりするなどいくつかの方法があります。お住まいの外壁や屋根、または雨が溜まりやすい「取り合い部」では以下のように雨仕舞が行われています。実際の雨仕舞の施工について見ていきましょう。
屋根は家の最も高い位置にあるため雨が当たりやすい部位です。そのため、屋根には雨水を効率良く排水し浸水を防ぐための様々な雨仕舞があります。
屋根に勾配(こうばい)を付けて雨が流れやすくすることも雨仕舞の一つです。
屋根材にはスレートや瓦など様々な種類がありますが、どの屋根材も、設置後にきちんと雨水が屋根から流れ落ちるように、最低限付けるべき勾配の下限が定められています。
「棟(むね)」とは屋根の面が重なり合い「山」を作っている部分を言います。
棟とは屋根面の継ぎ目であるため当然雨漏りの原因となりやすい箇所であり、棟の多い「寄棟(よせむね)屋根」や「方形(ほうぎょう)屋根」などは棟の少ない屋根と比較すると雨漏りが起きやすい形状と言えます。
スレート屋根や金属屋根の棟部分には雨仕舞として「棟板金」が取り付けられています。
「ケラバ」とは屋根の端で雨樋が付いていない側面を指し、先端には「破風板(はふいた)」と呼ばれる部材が付いています。
「軒先」は、雨樋が付いている側面の端で、先端には「鼻隠し」と呼ばれる板材が付いています。
破風板も鼻隠しも、屋根の端から建物内に雨水が入らないように取り付けられている防水用の板材ですが、さらに水切り金具を付けて雨仕舞を行うことによって破風板や鼻隠しへのダメージを軽減しています。
「谷」とは棟とは逆で屋根の面が重なり合い「谷」を作っている部分を言います。
そして谷に取り付けられている雨仕舞の部材を「谷樋(たにどい)」と呼びます。
銅やガルバリウムといった金属が使われることが多いことから谷板金と呼ばれることも多いですね。
屋根の谷になっているだけあり雨水が最も溜まりやすく雨漏りのリスクも高い危険な箇所ですので、谷樋は雨仕舞のメンテナンスでも特にチェックが欠かせない部位です。
屋根同様、雨風に晒されている外壁。当然雨漏りは外壁から起きることも多いため庇や窓の周りには雨水を浸水させないための雨仕舞が施されています。
庇には窓や玄関の上部に取り付けられており、窓や外壁に直接雨を当てないという役割があります。庇と外壁の接合部は雨水の浸入口でもあるため、板金で保護して雨を受け流す雨仕舞が施されています。
窓と外壁のまわりは、コーキング材という樹脂材で隙間を保護して雨仕舞されています。屋根に取り付けられている天窓も同様にコーキングで雨仕舞されています。 また、庇のない窓の上枠に板金を付ける雨仕舞の方法もあります。
「取り合い部」とは、異なる部材同士がぶつかっている部分のことです。取り合い部では部材同士の隙間から雨水が浸水しないように雨仕舞の処理が必要となります。
1階の屋根と外壁の取り合い部は、水切り金具を取り付けて雨仕舞されています。
外壁をつたって流れ落ちた雨は、そのままでは外壁と屋根の取り合い部に浸水してしまうため水切り金具で保護して雨水をシャットアウトし、屋根の下へ排水します。
外壁と屋根の取り合い部分はお住まいの中でも特に雨漏りの原因となりやすい箇所です。屋根の雨漏り補修では点検が欠かせない重要箇所と言えます。
ベランダやバルコニーでは床面の立ち上がり部分が外壁との取り合い部になっているため水切り金具が取り付けられています。
雨漏りの予防としてはベランダやバルコニーの床面の防水工事も重要ですが、水切り金具による雨仕舞が行われていないと、雨水が壁に浸水して室内の雨漏りや構造部の腐食を引き起こしてしまいます。
建物の基礎コンクリートと外壁の取り合い部には「土台水切り」板金を取り付けて雨仕舞を行います。
基礎と外壁の境目からの浸水は、建物床下の腐食やシロアリ被害などに繋がる恐れがあるため、忘れずに雨仕舞を施さなければなりません。
雨仕舞の劣化は雨漏りのリスクを高めます! 雨仕舞の劣化・不具合は早めの補修を!
家の雨漏りを防ぐためにはお住まいの点検をこまめに行い、劣化や不具合を早めに見つけることが何よりも大切になります。
棟板金が剥がれていては雨が降るたびに屋根の内部へと雨水が浸入しますし、取り合い部分の水切りが変形したり浮いたりしていると、排水不良を起こし、雨水のガードが弱くなることで雨水の浸入を許すことにも繋がります。
特に、屋根や窓枠の上など高い位置に取り付けられている雨仕舞はふだん目にする機会があまりないため劣化を見落としやすい箇所でもありますよね。
家のどこに雨仕舞がされているのか日頃から意識し、補修や交換のタイミングを逃さないように定期的に点検を行うよう心掛けていただきたいと思います
建物の雨仕舞は、何か特別な部材を設置しただけで効果を発揮するものではありません。
建物の構造や雨水の当たり方、部材同士の距離など様々な要素から雨の通り道を分析して適切な雨仕舞を行う必要があります。
そのため万が一にでも建物の構造や雨仕舞を理解していない業者に雨漏り補修を頼んでしまったような場合は補修自体が不完全になってしまい、建物をかえって雨漏りのリスクに晒すことになってしまいます。
ひどいケースでは誤った防水処理によって雨水の浸水経路を塞ごうとむやみに防水処理をした結果、雨水の排水経路まで塞いでしまい建物に流れ込んでしまうといったような雨仕舞の効果を無視した工事をされてしまっていたという現場もこれまで数多く見てきました。
雨漏り修理においては単に防水材を交換したり雨漏りした箇所を塞いだりしても、雨仕舞がきちんと行われていなければ雨水が適切に排水されないため、結局補修した箇所が再び雨水にさらされてしまい意味のない工事になってしまうことにもなりかねないのです。
雨漏り修理は雨仕舞の大切さを理解している業者に点検を依頼しましょう
雨仕舞は、建物が受ける雨水のダメージを軽減し、雨水の浸水による雨漏りを防ぐために欠かせない非常に重要なしくみです。
もし雨仕舞の不具合が原因で雨漏りが起きていた場合は、雨仕舞の仕組みや重要性を理解していない業者に雨漏り補修を依頼してしまうと雨漏りの原因を根本から解消することができない恐れがあります。
皆さんが雨漏りの調査や修理を依頼するときは防水処理の提案だけでなく雨仕舞についてもきちんと説明してくれる理解ある業者をぜひお選びください。
雨漏りを防ぐための「雨仕舞」の仕組みと必要性まとめ
雨仕舞(あまじまい)とは受けた雨水を適切に排水し、雨漏りから建物を守るための仕組み・工夫のことを言います
防水とは「雨水から建物を守る」ことを意味し、雨仕舞とは「雨水を受け流す」ことを言います
雨仕舞の不具合から雨漏りにつながったという例は数えきれないほど存在します
雨仕舞が適切に行われていることが外壁材や屋根材、そして建物自体の寿命を適切に維持することにも繋がります
屋根や外壁、取り合い部などお住まいの外装のいたるところに雨仕舞が施されています
雨仕舞の劣化や不具合はお住まいの雨漏りリスクに直結します。早めのメンテナンスを行いましょう