陸屋根の屋上や緩い勾配の屋根の周りを囲むようにある立ち上がり「パラペット」。
実は雨漏りが起こりやすい部分です。とはいえ、なぜそんなところが雨漏り原因になるのかイメージが付きにくいという方も多いでしょう。

この記事では、
・すでに雨漏りに悩んでいて原因がわからず「パラペットかも…」と不安な方
・雨漏りはしていないけれど事前に対策をしておきたいという方
に向けて雨漏り原因や注意点を分かりやすく解説をしていきます。
「そもそもうちにパラペットはあるの？」と確認しておきたい方も、今後のメンテナンスのためにまずはお読みください。

パラペットがどんなものなのか、そして修理方法やメンテナンスについて見ていきましょう。

屋根のパラペットとは

パラペットという言葉を「初めて聞いた」「聞いたことがあるけどよく分からない」という方も多いかと思います。「そもそも我が家にはあるの？」という疑問をお持ちかもしれません。
屋根が陸屋根（屋上）になっている建物では非常に大切なものであり、そしてそうでない場合でもパラペットつき住宅が増えています。

パラペットは我が家にもあるの？

パラペットは、建物の屋上を囲うように設けた低い壁を指します。
建物の端を立ち上げた低い手摺りのような部分で、「胸壁」「手すり壁」「扶壁」などとも呼ばれます。バルコニーの立ち上がりも、パラペットです。

そもそも屋根の種類は、傾斜がある“勾配屋根”、傾斜がなく平らな“陸屋根”に大別されます。これらの2つの違いは、「傾斜があるか・ないか」「表面を屋根材で覆っているか・防水材で保護しているか」です。ほぼ傾斜がないことが多い陸屋根は、屋上として活用できることから、狭小地などでも取り入れられるケースがあります。

陸屋根

パラペットはほとんどの陸屋根に設けられています。陸屋根は平らなように見えますが、厳密にはわずかに傾斜を設けて雨水を溜め、排出できるような仕組みになっています。そのためにも、このパラペットは活躍します。

勾配屋根

最近では、屋根材に緩やかな傾斜をつけ周りを取り囲むようにパラペットを設けることで、一見陸屋根のようなすっきりした外観に見せる住宅デザインも多いです。

パラペットが設けられる目的

転落を防ぐ　

人が立ち入ることのある屋上には、もちろん周りに壁や柵が備えられていますよね。パラペットの目的のひとつは、屋上からの転落を防ぐ壁、もしくは手すりや柵を取り付けるための土台です。

防水性を保ち、外壁の劣化を抑える

傾斜がついている“勾配屋根”の場合、雨水は屋根の頂部から軒先に伝わったのち、雨樋をつたって地面に流れていきます。
しかし陸屋根の場合、パラペットを設けなければ、外壁やサッシは雨が降るたびに“屋根から伝う雨”をそのまま受けてしまうことになります。屋根の傾斜がほとんどないため、ふだんから砂埃も溜まりやすく、雨が降ったときに一緒に伝ってくると外壁にとっては負担も大きくなります。

そこで、周囲の4方向にパラペットを設けることで、降った雨水がダイレクトに外壁に伝わることを防ぎます。
多くのパラペットは、その内側に内樋（箱樋）と呼ばれる排水溝が設けられており、そこから雨樋を通して排水する仕組みになっています。雨がかかる建材は劣化が早いですから、パラペットは外壁や窓サッシに必要以上に雨水がかかるのを防止します。

意匠性がぐっと高まる

近頃は、シンプルでスタイリッシュ、箱型（キューブ型）の住まいが人気です。軒の出がない分、狭小地でも立てやすいという利点もあります。

箱型の家を外側から見ると「屋根は平らで陸屋根だろう」という印象を受けるかもしれませんが、実はパラペットに隠れた内側に傾斜のある屋根が存在していることもあります。
「陸屋根はメンテナンスが不安、屋根に傾斜をつけたい」という希望をお持ちの方でも、「まるでモダンな箱型の住まい」と意匠性を高めることにもパラペットは一役買っているのです。

パラペットの高さは？笠木とは何のこと？

パラペットの高さには、特に決まりがありません。
「転落を防ぐ」という目的を重視するなら、せめて腰の高さよりも上にして手すり等を設ける必要がありますね。防水の観点で陸屋根に設けるときには、人が立ち入らないという前提で低いものもありますし、内側の勾配屋根を隠すために背が高いものもありますが、外壁の周りを立ち上げているものはすべてパラペットです。

また、パラペットとともによく耳にし混同されがちな「笠木」というものがあります。
笠木とはパラペットや手すり壁のてっぺんをカバーしている仕上げ材のことを指します。見た目をよくする目的のほか、防水効果を持たせるためにも重要な役割があります。
“木”という言葉が入っている笠木ですが、素材は、金属、セメントなどさまざまです。

パラペットから雨漏りする原因と症状

「屋根に傾斜をつけて雨水を流す」という一般的な屋根と比べると、パラペットの雨水の排出方法は独特です。パラペットの内側に内樋を設け、そこに流れついた雨水を排水口から雨樋へ排出します。
一般的な雨樋というと外壁の外側に設置されていますが、内樋や排水溝などパラペット周辺の下は建物の一部ですから、それらに不具合が起こると、雨漏りのリスクが高まってしまうのです。

パラペットから雨漏りする原因と症状を詳しく見ていきましょう。

内樋（箱樋）や排水溝の不具合

パラペットからの雨漏り原因として多いのが、内樋や排水溝の不具合です。

パラペットは、内樋や排水溝に雨を集めて排水を行いますが、雨水とともに土や砂、ゴミ（落ち葉など）が大量に流れてくると上手く排水ができません。詰まって排水処理ができない状態が長期化すると、雨漏りのリスクが高まります。
排水できず、水が常に溜った状態となると、防水層の劣化が早まります。雨仕舞のため板金が敷いてある場合も、錆びや変形が起こりやすい箇所です。そうして防水層や板金に穴が空いてしまうと雨漏りが引き起こされるのです。

笠木の不具合

パラペットの上を覆うように取り付けられている「笠木」の不具合により雨漏りを引き起こすことがあります。笠木はさまざまな素材がありますが、屋根には防水性の観点からガルバリウムやステンレスなどの金属素材が用いられているケースが多いです。

しかし、雨風が直接うちつける箇所のため、経年により錆びや変形のリスクがあります。雨は上から降ってくるだけではありません。風を伴って横からくることもあれば、下から吹き上げる強雨のこともあるでしょう。メンテナンスがしっかりされたパラペットが正常に機能していれば多少浸水しても排出ができるようになっています。しかし、傷んでくると笠木内部から外壁に雨を浸入させてしまうことになり雨漏りしやすい箇所です。

また、笠木同士を繋ぐ目地部分やビス部分にも劣化による隙間ができることで雨漏りを引き起こすこともあります。錆や変形がひどく笠木が剥がれてしまったら、雨が常に入り込んでいる状態。雨漏りが起こるのも時間の問題です。

立ち上がり周りの壁の不具合

パラペットの壁部分の劣化による雨漏りもあります。
パラペットの素材は多くの場合、その建物の外壁と同じです。モルタルならクラックの発生、サイディングなら割れや目地の劣化など起こる可能性があります。そうして隙間ができるとそこから雨が浸入し雨漏りとなってしまいます。

パラペットのメンテナンスと修理

パラペットは雨漏りしやすい場所ではありますが、日頃のメンテナンスや適切な修理を施すことでリスクは回避できます。パラペットは構造上、内側が見えず不具合を見逃しがちですから十分注意しましょう。ただ、人が使う目的で造られた屋上以外は、屋根に上るのは大変危険です。定期的な点検は専門業者に任せるようにしてくださいね。
パラペットのメンテナンスポイントをご紹介していきます。

樋が詰まっていたり錆びていたりしないか

パラペットがあるお住まいでは、正常に雨水を排出するために「樋の詰まりチェック」が重要です。
パラペットはその壁によって、雨水だけでなく、落ち葉や砂ぼこりが集中して溜まりやすい場所です。雨によって落ち葉が泥と混ざると、ますます内樋の底に密着し腐食、詰まりがひどくなるでしょう。これによる雨漏りを回避するには、掃除をして水の流れをスムーズにしなければいけません。

また、内樋として板金が備え付けてある場合、金属ですから錆が起こりやすいです。「定期的に塗装をして錆を予防する」、「錆びや変形が見られたら早期に交換する」のどちらかでしっかりメンテナンスしてあげましょう。

錆が広がった板金をステンレス製のものに交換

排水溝の防水が傷んでいないか

パラペットの排水処理のためにある排水溝には、陸屋根の床と同じように防水処理が施されていることもあります。
表面のトップコートが劣化してくると、層のひび割れやめくれなどのリスクがあるため、メンテナンスが必要です。
防水層には、ウレタン防水やFRP防水、シート防水などがあります。だいたい5年前後を目途にトップコートの塗り替えをしましょう。

また、防水層に浮きや剥がれがあれば、トップコートの塗り替えだけでは済みません。部分補修で済む場合もありますが、防水工事自体を施工し直さなければならないこともあります。

雨漏りを起こした排水溝のウレタン防水施工

清掃で土やゴミ、古い防水層を洗い流し、「DSカラー・ゼロ」というウレタン塗膜防水材を塗布していきます

錆びたドレンにはフレキシブルホースを差し込み改修、密着力を高めるためのプライマー、ウレタン防水材2回塗りで仕上げました。施工期間は4日間。ドレン詰まり防止のためのカバーを設置し完了です。

笠木が浮いたり外れたりしていないか

パラペットの上部をカバーしている笠木ですが、紫外線や雨風の影響をかなり受けやすく劣化も早いです。金属の場合は錆びによる穴あきや風にあおられてのめくれが心配されます。
また笠木は、設置の際にどうしてもつなぎ目ができます。そこから浮きや外れの原因となり雨漏りにつながることもあります。
もし下から見上げて浮いているのが確認できた時は早急に補修しましょう。

笠木の定期的なメンテナンスとしては、コーキング処理や塗装です。ただし、剥がれがひどい場合には交換、さらに笠木の下地にまで腐食が広がってしまった場合は壁ごと補修しなくてはいけなくなります。

割れたパラペット笠木をガルバリウム鋼板で交換修理

青いパラペット笠木がひび割れ、釘が抜けかけ緩んでいるのも確認できました。笠木をはがしてみると内部の木材が腐食しています。雨水が入り込んでいたのでしょう。

外壁に雨が当たりやすいのでクラックやシーリング劣化もチェック

パラペット周辺だけでなく、外壁も点検しましょう。

パラペットがある建物の大きな特徴は軒がないことです。屋根上部からの雨水はパラペットで堰き止めるとはいえ、軒がない分、空から降ってくる雨風を受けやすい構造をしています。雨風や紫外線が当たると外壁の塗膜が傷み、そのうちに防水性が失われます。
塗膜が劣化すると顔料が浮き粉状となる「チョーキング現象」が起こるので、塗り替えの目安にしましょう。

クラックや外壁材の浮き・剥がれ、剥離などがないか、またサイディングボードの目地部分やサッシ廻りのシーリングの劣化（痩せ・ひび割れ・痩せなど）も定期的にチェックしましょう。

普段見えない場所だからこそ点検を忘れずに！

雨水の堰き止め、防水や転落防止の役割を持つパラペット。陸屋根だけの独特な部分かと思いきや、実はスタイリッシュな外観にするために傾斜のついた屋根にも採用されることもあります。一般的な住宅でもパラペットがあるケースが増えているでしょう。

内樋や排水溝、笠木などパラペット周辺は傷みやすい箇所が多いです。定期的なメンテナンスを行うことで、傷みを最小限に留め、雨漏りなど重大な問題を防げるでしょう。

ただパラペットは雨漏りしやすく注意しなければいけないのにもかかわらず、普段は見えにくい部分です。メンテナンスを怠ると、ゆっくり進行していく問題にも気づかないかもしれません。雨漏りは、時間が経てば経つほど被害も広がります。気が付いた時には修繕のための手間や費用が大きくなってしまうことも珍しくありません。

「見えないけれど、うちのパラペットはどうなっているのか不安…」「そういえば、笠木らしき部分が浮いているように見える」など、パラペットに関するお悩みがあれば、アメピタへご相談ください。

現在の状況をきちんとチェックして、最適なご提案をさせていただきます。